木村拓哉の眼差しに走る緊張感 『教場』が問いただす私たちの選択とは

 そして、この警察学校という閉ざされた世界は芸能界にも、さらにこのドラマを見る一人ひとりの職場や学校に通じるものがあるのではないだろうか。最初は白髪、義眼という木村のイメージにない姿に少し戸惑った。だが、物語が進むに連れて、このわかりやすい“別人“のアイコンがあればこそ、トップアイドルとして、俳優として闘い続けてきた“木村拓哉“と風間が、本質で繋がっていることが強調されるようだ。

 完成披露試写会では、生徒役の俳優たちから撮影時の木村の様子が明かされた。生徒役のキャストは実際に警察学校の指導を受けながら「気をつけ」「安め」「楽に休め」から練習をし、「行進」はもちろん、手帳、警笛、手錠、警棒の「出す、収める」を繰り返し行なったのだそう。撮影は、2019年の夏の暑い2カ月間。そこに木村は自らの意思で付き合い、生徒たちはその眼差しにさらなる緊張感を持ったという。

 「コミュニケーションを取っておかないと、まず」かつて、テレビの収録時に楽屋に戻らず、スタッフと積極的に会話をする木村の“仕事の流儀“が披露されたことがあった。木村は、この現場でも率先してスタッフとコミュニケーションを取り、撮影の合間にも椅子になかなか座ろうとしなかったとも。それを見ていた三浦翔平と大島優子は「自分が先に座りにくい」と感じていたと言い、逆に葵わかなは「立っているのが好きな人なのかなって」と気にせず座っていたと話す。そんな個性豊かな教え子たちのやりとりを見て、木村も思わず笑っていた。

 仕事に対する姿勢は、世代によって大きく変化してきた。そして近年では、より個の考えが尊重されるような風潮にある。変わりゆくものの中で、変わらないものも。それは人と生きていかなければならないということ。どんな職業を選んでも、どんなキャリアを目指しても、その覚悟がなければ「辞めていい」と風間が退校届を突きつける。それは「ふるいにかけられる」と思う人もいるだろうが、見方を変えると「逃げてもいい」という選択肢を見せてくれているようにも感じる。

 完成披露試写会で木村が「フジテレビはお正月にこれをやるんだ」と気にするほどの重みのある作品。だが、1年の始まりだからこそ「なぜ自分は、この場所を選んでいるのか」を私たちに問いただす、とてもいいドラマだと思う。明日の後編も、じっくりと見届けたい。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
フジテレビ開局60周年特別企画『教場』
フジテレビ系にて1月4、5日二夜連続21時放送
出演:木村拓哉、工藤阿須加、川口春奈、林遣都、葵わかな、井之脇海、西畑大吾
(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、富田望生、味方良介、村井良大、佐藤仁美、和田正人
石田 明(NON STYLE)、高橋ひとみ、筧利夫、光石研(友情出演)、大島優子、三浦翔平、小日向文世他
原作:長岡弘樹『教場』シリーズ(小学館)
脚本:君塚良一
演出:中江功
プロデュース:中江功、西坂瑞城、髙石明彦(The icon)
制作協力:The icon
制作著作:フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/kyojo/index.html

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