『G線上のあなたと私』波瑠を救った中川大志の言葉 “ゆるくて優しい世界”から一歩踏み出した2人

「バイオリン教室がなくなったら、消えちゃうと思う? 私たちの関係。最悪、私たちが二度と会わなくなっても、何かの拍子に私たちが二度と会わなくなっても、それはそれでいいのよ。だって“大丈夫“って思うもん、私」

 火曜ドラマ『G線上のあなたと私』(TBS系)が最終回を迎えた。大人のバイオリン教室で出会った、也映子(波瑠)、理人(中川大志)、幸恵(松下由樹)、そして眞於(桜井ユキ)や、その家族たちの“人間愛“の物語は、このドラマ(バイオリン教室)がなくなっても続いていく……そんなことを思わせてくれる幸恵の言葉と共に締めくくられた。

“好き“の先に待っているもの

 誰もが笑顔になるハッピーエンド……でも、きっとこの先もまた苦悩はある。そんな余韻を含んだラストは、常に揺らぎ、迷い続けたこのドラマらしい結末。プチ家出を経て、夫婦と家族の絆が強まったように見えた幸恵も、家族のために一生懸命になりすぎるクセは抜けず、「そういうとこ!」と指摘をされてしまう。「ま、そこがいいところなんだけど」と義母のフォローが入るようになっただけ、一歩前進といったところ。

 そう、人はなかなか変われないもの。おそらく、女心に疎い夫の言動にこれからもショックを受けたり、深く傷ついたことを思い出して涙がこみ上げることもあるだろう。一歩ずつ良くなっていく“これから“に、希望を持ち続けることこそが、愛なのかもしれない。刹那的な“好き“に対して、“愛”は継続的なもの。自分の未来も見えないのに、さらにコントロール不能な相手の人生と向き合っていくのだから、それはそれはしんどい。

 “好き“の先に待っているのは、そのしんどさを愛と共に受け止める覚悟。だが、也映子はせっかく想いを通わせた理人に対して、その覚悟がなかなか持てない。8歳年下の「これからの人」である理人には、次の恋愛があるかもしれない。いつか自分よりも魅力的な人と出会ってしまうかもしれない……と、勝手にいつかくる“かもしれない“最悪のシナリオを描き、怯え、恋人でいるよりもゆるい心地いいバイオリン仲間に戻りたいと告げてしまう。

見えない不安に効く言葉

 好きになるということは、幸せな気持ちを生む一方で、それを失う絶望と表裏一体。だからこそ、也映子は悩み苦しんでいるのだが、理系男子な理人には、なぜ起きてもいないことに悩んでいるのか、さっぱりわからない様子。未来の話ばかりして今を楽しめないなんて、本末転倒なのだが、それを理屈で説明したところで、也映子の本能的な不安は消えることはない。

 若くてまっすぐな理人を失う未来に怯える也映子を救ったのもまた、理人の若くてまっすぐな「あなたのためなら何とかするから、全部」という言葉だったのも、不安と安心が表裏一体なのだと感じさせる展開。好きだから不安になる。だが、その不安を安心に変えるのも好きという気持ち。人生はそんな表裏一体のものに翻弄されている。だから、その揺れてしまう未来を一緒に向き合っていくという言葉こそ、不安の特効薬なのだ。

 「うまくいくとかいかないとか、不安になるとかならないとか、そういう面倒なことは考えないようにしようって」という也映子は、決して思考停止になったわけではなく、自分と同じ温度感で未来に向き合ってくれることを、態度で見せてくれた理人に安心したからに違いない。

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