2019年の年間ベスト企画

年末企画:折田侑駿の「2019年 年間ベスト俳優TOP10」 原作キャラの“再現”にとどまらない熱量

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2019年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優たちも紹介。今回は、2019年に日本で劇場公開された邦画の作品と、放送されたドラマの中から執筆者が独自の観点で10人の俳優をセレクト。第1回の選者は、映画から舞台まで幅広く鑑賞し、多くの役者評を執筆した映画ライターの折田侑駿。(編集部)

・伊藤健太郎
・山崎賢人
・染谷将太
・三浦春馬
・池松壮亮
・柳楽優弥
・宮沢氷魚
・清原翔
・笠松将
・サトウヒロキ

 この2019年、大いに楽しませてくれた俳優たち。ここでは昨年に引き続き、強い魅力を放った10名の男性俳優を挙げていきたい(順不同)。

 まずは、伊藤健太郎と山崎賢人。この二人は、露出の頻度としては昨年と比して大きく減った。昨年の伊藤は出演した映画が続々と公開されたし、山崎は主演映画一本に加え、二本ものドラマで主演を務めた。でありながら、なぜ両者ともこの一年を通して忘れがたい存在になったか。それはもちろん、伊藤は『惡の華』、山崎は『キングダム』と、公開された主演作の威力があまりに大きかったからである。

山崎賢人 (c)原泰久/集英社 (c)2019映画「キングダム」製作委員会

 どちらも原作ありきの作品。となれば当然、多くの“原作ファン”が存在し、実写化の報が出た時点で、「イメージと違う」といった声が方々から上がっても不思議ではない。両作とも熱烈なファンを持つ作品とあって、演じる彼らもそれ相応のプレッシャーを背負っていたのではないかと思う。しかしフタを開けてみれば、あちこちから聞こえてくる称賛の声。むろん、他者の評価を基準にするわけではないが、彼らが今後も作品を背負い続けていくことができるかどうかは、この“声”にかかっているのも事実だ。作品の毛色がまったく違うとはいえ、両者とも原作のキャラクターの“再現”の枠にとどまらない、それぞれの人物の熱量を体現していたように感じる。映画が原作から独立したかたちで立ち上がるのに、彼らは多大な貢献を果たした。信頼できる二人である。

 年齢的には“若手”ながらも、キャリア的にはすでに“ベテラン”の域に入りつつある染谷将太、三浦春馬、池松壮亮にも胸を熱くさせられた。染谷は例年通り、多くの出演作が公開。とくに、黒沢清監督作『旅のおわり世界のはじまり』の染谷は素晴らしかった。彼はウズベキスタンにロケに来ているテレビディレクターという役どころであったが、このクルーの一員として、そして映画のいちピースとして、黒沢監督の生み出すフレームに絶妙に収まっていた。かと思えば、朝ドラ『なつぞら』(NHK総合)では果敢にオーバーアクトを実践していたりするのだから面白い。

染谷将太 (c)2019「旅のおわり世界のはじまり」製作委員会/UZBEKKINO

 三浦、池松もまた、露出の目立った存在だ。その中でもやはり強く胸を打たれたのは、市井の人々の群像を活写した『アイネクライネナハトムジーク』での三浦の姿と、一人の若者の成長していく姿を描いた『宮本から君へ』での池松の姿。両作とも“生き方”についての映画だと感じ、彼らと同い年の筆者は大きな勇気をもらった。観る者に勇気を与えるーー改めて俳優とはすごい職業だと思う。三浦は舞台『罪と罰』で主演を務め終えた直後に、ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』再演の成功も収めており、舞台俳優としても相当なポテンシャルを秘めているようだ。

関連記事