『HUMAN LOST 人間失格』は和洋折衷で世界に通じる!? 太平洋を越えた宮野真守の人気を実感
11月29日公開のアニメーション映画『HUMAN LOST 人間失格』の業界人トーク付き先行試写会が11月22日に都内で開催され、「CGWORLD」編集長の沼倉有人司会進行のもと、コンセプトアートの富安健一郎、アニメーション制作の塩田周三、企画・プロデュースの橋本太知が登壇した。
本作は、太宰治の『人間失格』を屈指のクリエイター陣が再構築したオリジナルアニメーション映画。医療革命により死を克服した昭和111年の東京を舞台に、体内のナノマシンをネットワーク管理する究極の社会システム“S.H.E.L.L.”(シェル)体制によって生かされる人々を描く。文明の再生と崩壊の二つの可能性の間で大きく揺れ動く日本で、薬物に溺れ怠惰な暮らしを送る大庭葉蔵は、謎の男・堀木正雄とともに、特権階級の住まう環状7号線内(インサイド)への突貫に参加し、激しい闘争に巻き込まれる。
イベントでは、「世界におけるCGアーティストの今と未来」をテーマにトークを展開。企画スタート時から海外向けコンテンツとして発信していきたいという狙いがあった本作の制作の裏側を語った。
沼倉の「富安さんのビジュアライズがみんなの共有意識を高めるうえで、重要な役割を果たしている。ビジュアル面のリーダーという位置付けだったのでは?」という質問に、富安は「話し合いの中で、だいたいこういう形になるというのは見えていた。それをベースに解像度を上げていくというイメージだった」と制作の経緯を解説。続けて「それまでアニメーション作品にコンセプトアートとして入ることはほとんどなかった。日本の当時のアニメーションはコンセプトアートがなくてもすごい作品が出来上がるシステムができていたので、自分は必要ないのでは? という話をした経験もある」とコメントし、日本のアニメーションの制作スタイルに戸惑いや驚きがあったことも明かした。
塩田も「言語の統一や、振る舞い、意識の違いなど2DとCGアニメの制作方法に驚くことが多かった」と説明。「『HUMAN LOST 人間失格』は、背景をできるだけCGでという方針だったが、CGの世界から作画背景を発注するという、ワークフロー的な部分でも、戸惑いがあった」と振り返る。そして、CGでアニメを作ることが許容されていない時代からCG屋としてやってきたポリゴン・ピクチュアズが、『シドニアの騎士』『亜人』『GODZILLA』シリーズ、『BLAME!』とアニメ作品を作るようになったことに触れ、「CG屋ならではの作品を試す局面にきている、そう感じたタイミングで『HUMAN LOST 人間失格』を作ることになった」と明かした。
話題が海外での反響移ると、沼倉は「日本的な題材をポリゴン流でCGアニメに仕上げているのは、和洋折衷で世界に通じるものができたという印象を受けた」とコメント。アヌシー・アニメーション国際映画祭での観客の反応について橋本は、「伝えたいと思っていたことが意外にも伝わっていると感じた」という。
塩田は「僕自身、何回観ても相変わらず“わからない”と思ってしまう映画。でも、この映画がわからない自分がアホなんだと思わせるような気品がある。まるで『ブレードランナー』や『AKIRA』、『攻殻機動隊』シリーズを観たときと同じような感覚になったので、ひょっとしたらひょっとするのではと感じている。この高度なツッコミに外国人がついてこれるのか、とも思ったけれど、意外と僕自身がわかっていないところを理解していたりして、反応はおもしろいし、コメントもすごくいい。SNSなどでも評判がいいことは実感している」と語った。
また、橋本は「何より驚いたのは、アメリカで開催された『Anime Expo 2019』でのスクリーニング。宮野(真守)さんが登壇した瞬間に、コンベンションセンターが揺れた。太平洋を越えて、彼の人気を実感した」と当時の驚きを振り返っていた。
※大庭葉藏のぞうは旧字体が正式表記。
※木崎文智の「崎」は「たつさき」が正式表記。
■公開情報
『HUMAN LOST 人間失格』
11月29日(金)公開
声の出演:宮野真守、花澤香菜、櫻井孝宏、福山潤、松田健一郎、小山力也、沢城みゆき、千菅春香
原案:太宰治『人間失格』より
スーパーバイザー:本広克行
監督:木崎文智
ストーリー原案・脚本:冲方丁
キャラクターデザイン:コザキユースケ
コンセプトアート:富安健一郎(INEI)
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
企画・プロデュース:MAGNET/スロウカーブ
配給:東宝映像事業部
(c)2019 HUMAN LOST Project
公式サイト:human-lost.jp
公式Twitter:@HUMANLOST_PR