『G線上のあなたと私』波瑠の必死の叫びが胸を打つ 難易度の高い人生に必要な仲間の存在

 誰かに自分たちの「楽しい」を、どうこうされたくない。理人には、その想いをストレートに表現する若さがある。理人に比べて長く生きてきた也映子と幸恵にとって、その素直さがくすぐったくもあり、愛しくもあり、そして救われるのだ。

 時間は常に流れている。大人になるほど、立ち止まってはいられないと、早く切り替えて見せたり、そもそも傷ついていないフリをしたりと、なんとか折り合いをつけながら前に進もうとするものだ。だが、理人はそんな大人になった女性ふたりに、まっすぐにぶつかってくる。

 理人に刺激を受けて、也映子と幸恵も少女のようにハシャいだり、思いの丈をぶちまけたり。平凡な大人という仮面を外してイキイキとして話す姿は、実に爽快だ。「本当に好きかどうかなんてどうやってわかるのか」と也映子が理人に食ってかかるシーンは、まさに名場面。理人にも伝わるように言語化を心がけながらも、誰にもぶつけられなかった想いをこれでもかと投げつける。

 そう、誰にもわからないのだ。誰がどんな思いを抱えて、どんなふうに苦しんでいて、何を頑張っているのかなんて。それぞれの問題と、それぞれの形で向き合って、なんとか生きている。私たちは、自分の人生を動かすことのできる唯一の存在。思い通りに音が出ないバイオリンのような人生を、必死に動かしているのだ。

 そんな人と人とが、一緒に生きていく上で必要なのは、人生経験を活かしたアドバイスよりも、味方であることを告げる「応援している」の言葉で十分なのかもしれない。立場やフィールドが異なっても、親愛を込めて名前呼びできる同志がいれば。楽しもうと思える
仲間がいれば。この難易度の高い人生を、のびのびと奏でられるはずだ。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
火曜ドラマ『G線上のあなたと私』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:波瑠、中川大志、松下由樹、桜井ユキ、鈴木伸之、滝沢カレンほか
原作:いくえみ綾『G線上のあなたと私』コミックス全4巻(集英社マーガレットコミックス刊)
脚本:安達奈緒子
演出:金子文紀、竹村謙太郎、福田亮介
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:佐藤敦司
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gsenjou/

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