のん、女優としてのリスタートへ 舞台『私の恋人』出演、『この世界の片隅に』放送で高まる期待
『あまちゃん』から『私の恋人』に至るまでの長く曲がりくねった空白期間の中で、多くのファンやクリエイターたちが彼女に表現の場を作るために奔走した。まるでそれは「If you build it,he will come(君がそれを作れば、彼はやってくる)」という風のささやきを信じて、自分の畑をさしだすあの小説の主人公のようだった。ファンたちは彼女の情報がまったく途絶えた間もイラストを描いたり、ドラマを見返したりして彼女への思いをつないできたし、音楽活動にも多くのミュージシャンが関わった。そして言うまでもなく、片渕須直監督による『この世界の片隅に』は、その中で彼女が見せた素晴らしい演技も相まって第40回日本アカデミー賞の最優秀アニメーション作品賞、第90回キネマ旬報の日本映画第1位に輝いた。その成功はやがてテレビを動かし、今年の8月にはNHKで映画の放送、そしてそれに伴う特別番組では何年ぶりかに彼女の映像コメントが放送された。
多くの人が、舞台の次に彼女が帰ってくる場所を予感している。歴代ヒロインの登場する『なつぞら』や、宮藤官九郎が脚本を書く大河ドラマ『いだてん』(NHK総合)にそれが間に合うかどうかはわからない。でも例えそこで間に合わなかったとしても、近い将来に彼女は帰ってくる。
それはたぶんハッピーエンドではなく、僕たちの社会のリスタートになるはずだ。ようやく彼女は奪われたイノセンスの象徴であることをやめ、26歳の若い女優として(その能力は『あまちゃん』のころよりもはるかに増していると舞台を見て感じた)歩き始めることができる。
そして、「のん」という含蓄のある名前もすっかりお馴染みになりこれはこれでなかなかの二つ名ではあると思うけど、いつか彼女があの稀少な美しい本名を名乗れる日が来るのではないかと思うのだ。僕たちがフェアで、自由な社会を作ることができた時、たぶんきっと彼女はそこにやってくる。
※記事初出時、一部に記述の誤りがありました。訂正してお詫びいたします。(9月25日)
■CDB
好きな映画や本、好きな人についてつぶやいています。
Twitter
■公開情報
『のんたれ(I AM NON)』
10月2日(水)全エピソード公開(YouTube Premiumメンバー対象)
EP1無料公開、以降毎週水曜日に1エピソードずつ無料公開
作品公開チャンネル:https://www.youtube.com/user/YouTubeJapan
■販売情報
『この世界の片隅に』
Blu-ray&DVD発売中
声の出演:のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、岩井七世 、澁谷天外(特別出演)
監督・脚本:片渕須直
原作:こうの史代「この世界の片隅に」(双葉社刊)
企画:丸山正雄
監督補・画面構成:浦谷千恵
キャラクターデザイン・作画監督:松原秀典
音楽:コトリンゴ
プロデューサー:真木太郎
製作統括:GENCO
アニメーション制作:MAPPA
配給:東京テアトル
発売・販売元:バンダイビジュアル株式会社
(c)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
公式サイト:konosekai.jp