『いだてん』阿部サダヲ×桐谷健太、同じ志のために別々の道へ 激動の「昭和」が始まる

 一方、松澤の台詞は、激動の時代をブレることなく突き進むであろう“まーちゃん”の魅力に説得力を与えるものとなった。代表選手から外され、政治に怒りを向ける高石勝男(斎藤工)に、松澤は反論した。

「例え泳げなくとも、それを補って余りある魅力がある。だからまーちゃんのためなら一肌脱いでやろうって思うんだよ!」
「まーちゃんのことほっとけない、そう思わせる“なにか”が、田畑政治にはある!」

 松澤を演じる皆川の演技はコミカルだが、演じる皆川の目には迷いがない。政治への強い信頼を感じさせるその目によって、笑いあるシーンの中であっても、松澤が政治に信頼を寄せているのが分かる。そして、政治にある“なにか”が結局何なのか分からなくとも、政治の「人を動かす力」は十分伝わってきた。

 登場人物たちの台詞から、激動の時代とそんな時代を生き抜く政治の魅力が描かれた第28回。今回描かれた「五・一五事件」をはじめ、今後も史実に基づいたシリアスな展開が続くはずだ。だが、政治が体協理事を「嫌、嫌、嫌!」と断る姿や、高橋是清(萩原健一)に木靴で頭を小突かれる姿など、コミカルなシーンが随所に盛り込まれるおかげで物語が重たくなりすぎない。笑いを散りばめながらも、史実から決して目を背けない大河ドラマに心打たれた視聴者も少なくないだろう。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』
[NHK総合]毎週日曜20:00~20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00~18:45
[NHK BS4K]毎週日曜9:00~9:45
作:宮藤官九郎
音楽:大友良英
題字:横尾忠則
噺(はなし):ビートたけし
出演:阿部サダヲ、中村勘九郎/綾瀬はるか、麻生久美子、桐谷健太、斎藤工、林遣都/森山未來、神木隆之介、夏帆/リリー・フランキー、薬師丸ひろ子、役所広司
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/idaten/r/

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