石橋静河×古舘佑太郎が語る、『いちごの唄』で得たもの 古舘「自分で大丈夫なのか不安だった」

古舘「峯田さんが『お前、すごいおもしれえな』と」

ーー本作は、銀杏BOYZの楽曲も大きなモチーフの1つです。2人にとって銀杏BOYZは役を演じる前から身近な存在でしたか?

古舘:僕は中学校2年生の時、近くのレンタルCD屋でCDを借りるのが趣味だったんですが、そのレンタルCD屋に銀杏BOYZとオナニーマシーンっていうバンドのCDが並んでいたんですよ。借りたかったんですが、その名前の並びですし、ポップにも結構下ネタが書いてあったので、怒られるんじゃないか……と思ってやめたのが、銀杏BOYZという名前を知ったきっかけでした。

 だから、「名前は知ってるけど聞いたことない」という期間が続いていたんですが、中学3年生になってランニングに行こうと思って、姉ちゃんのiPodを借りたら銀杏BOYZが入っていて聞いてみたんです。それで衝撃を受けて、家に帰ってすぐYouTubeで他の銀杏BOYZの曲を探していたら「BABY BABY」という曲が流れて。今までの音楽体験で初めてだったんですが、うわーって感情が爆発しちゃって、部屋で1人で暴れまわったんです。ベッドの上で飛び跳ねたり、本棚を倒したり……。「この感情はなんだろう?  なぜかわからないけど部屋をぐちゃぐちゃにしちゃった」と衝撃を受けたのを覚えてます。

石橋:私は、名前は知っていたんですが恥ずかしながら聞いたことがなくて、脚本を読んでから聞き始めました。やっぱり千日という役のことを考えていると、悲しい気持ちになってきて、体も心もどうしたらいいかわからないって思ってしまう時があるんです。そういう時に、本当に峯田さんの歌に助けられて。撮影が終わってからも聞いています。急に自分の近いところに来てくれた音楽という感じがします。

ーー銀杏BOYZの峯田さんとは今回共演もされていますが、峯田さんからアドバイスはありましたか?

古舘:僕は、撮影前に峯田さんに1度「お話を聞かせてください」という趣旨のメールを送ったんですけど、無視されて(笑)。でもそれは無視という名の返事だと受け止めました。そうしたら撮影で一緒になった後に、「そのメールを返さなかったのはわざとだ。俺のことなんか気にせず自由にやってくれ」って言ってくださったんです。僕もそれですごくのびのびやれるようになって、峯田さんが「お前、すごいおもしれえな」と言ってくれました。その一言だけですけど、すごく嬉しかったです。

石橋:私は撮影で初めてお会いしたんですが、現場ではおそらくあえて、その役をやるために現場に来ているという雰囲気でいらっしゃって。だから、私も全く気負うことなく自分がやるべきことに集中できたので、そうやっていてくださったのはかっこいいなと思いました。

ーーお2人は、本作はどんな作品だと感じていますか?

古舘:僕が銀杏BOYZを最初に聞いて暴れまわったのって、理由は説明できないものだと思うんですね。言葉に言い表せない、何でかわからないけど「うわー」ってなることは、銀杏BOYZなどの音楽に限らず、映画でもありました。自分がかつてそうなったみたいに、今度は『いちごの唄』が誰かにとってそういう作品になれば嬉しいです。

石橋:改めてこの作品を観ると、優しい映画だなと思います。この映画は、青春や恋愛という明るいものが根底にあるけれど、そうした要素とは別に、あーちゃんやコウタだけでなく、震災で被災した女の子も出てきて、それぞれの人たちが色々な葛藤を抱えています。その葛藤を包み込むような、すごく風通しのいい優しさが流れているので、それをぜひ観て体感してもらいたいです。

(取材・文・写真=島田怜於)

■公開情報
『いちごの唄』
全国公開中
出演:古舘佑太郎、石橋静河、和久井映見、光石研、清原果耶、小林喜日、大西利空、泉澤祐希、恒松祐里、しゅはまはるみ、渡辺道子、ポール・マグサリン、山崎光、蒔田彩珠、吉村界人、岸井ゆきの、峯田和伸、宮本信子
監督:菅原伸太郎
脚本:岡田惠和
原作:岡田惠和・峯田和伸(朝日新聞出版)
音楽:世武裕子・銀杏BOYZ
製作:『いちごの唄』製作委員会
配給・宣伝:ファントム・フィルム
(c)2019『いちごの唄』製作委員会
公式サイト:ichigonouta.com
公式Twitter:@ichigonouta

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