『ザ・ファブル』漫画実写化として上質な一作 アクション×笑いだけにとどまらない本質をよむ

 そして冒頭でヤクザの組を流れるような動きで全滅させるファブルを見せておきながら、その後彼がボス(佐藤浩市)の命令で一年間殺しを禁止されて大阪での一般人としての生活が始まるとクライマックスまでほとんどアクションが出てこないのも抑制が効いている。

 しかも本作は邦画にしては珍しくファブルや周りのヤクザなど個々人が使っている銃器で各々の性格付けをしていたり、人を殺せない縛りのあるファブルが殺傷能力の低い銃を用意するために手動でバレルを加工する原作の名場面もしっかりと再現していたりと硬派なアクションファンも喜ぶ要素もしっかりと入っている。

 そしてラストでは、誰も殺さずにヤクザたちから人質2人を奪還するという難易度MAXの展開が用意されるが、そこで的確に最小限の動きで相手の足を止めながらとあるアクロバットなアクションを見せる岡田の一連の動きは惚れ惚れするほどだ。間違いなく邦画アクション史に刻まれるだろう。

 アクション以外でも見所は多い。中盤約1時間強に渡って、殺し屋としては天才ながら一般常識はまるでないファブルが同業者で妹のふりをしているヨウコ(木村文乃)と暮らしながら普通に振舞おうとするも、まったく社会に馴染むことができない様が描かれる。キャッチコピーにあるとおり「世界基準アクション×ハッピーな笑い」の笑いの部分だ。元は『木更津キャッツアイ』シリーズで名を上げた岡田だけに顔芸やとぼけた演技も難なくこなす。原作のファブルより顔が端正過ぎるが、そんなイケメンが常識はずれな行動を無自覚に繰り返すとより違和感が増し、原作とはまた一風変わった可笑しみがあった。

 ファブルだけがどハマりしている芸人のジャッカル富岡を演じる宮川大輔は本職らしく短い出番でギャグでインパクトを出してくれる。富岡のギャグをファブルがとあるシリアスな場面で唐突に真似るシーンのシュールさは忘れがたい。また彼が勤めることになるデザイン会社の社長役の佐藤二朗も、福田雄一作品で見せるような安定のとぼけた演技をしている。笑いの部分でも十分なクオリティを見せてくれた。

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