『アラジン』作曲家アラン・メンケンが語る、“記憶に残る音楽”を生み出す秘訣

「音楽はものすごい力を持っている」

ーー『アラジン』は長年コラボレートしていた作詞家のハワード・アッシュマンとの最後の作品ということもあり、あなたにとっても思い入れのある作品なのではないでしょうか?

メンケン:もちろんそうだよ。『アラジン』は僕にとっても大きな転換期になった作品でもあるんだ。当時、ハワードは『アラジン』の楽曲の詞をある程度完成させた状態で亡くなってしまったんだけど、その後バディものだったストーリーが恋愛ものに変わってしまった。そこからティム(・ライス)が参加したんだ。当時はティムとのコラボの結果がどうなるかもわからなかったけど、グラミー賞やアカデミー賞などいろんな賞を受賞できたし、チャートのNo.1にもなった。僕のキャリアにおいてハイライトと言えるね。

ーー誰もが口ずさめるような楽曲やスコアを数多く手がけられてきたわけですが、そういった“記憶に残る音楽”を生み出す秘訣はなんでしょう?

メンケン:僕は一般的なポップサウンドは決して選ばないんだ。大切なのは、キャラクターやストーリー、そしてそれぞれの企画から、その世界にしかない音楽的語彙の特有さに気づくことだね。『リトル・マーメイド』だったらちょっとカリプソ風なレゲエ、『美女と野獣』だったらフランス系のミュージカル、『ポカホンタス』だったらアメリカ先住民風な音楽、『ノートルダムの鐘』だったらフランスの教会やジプシーのような民族的な音楽、『ヘラクレス』だったらゴスペル、『魔法にかけられて』だったらウォルト・ディズニー史を辿るような音楽、『塔の上のラプンツェル』だったらフォークロック、そして今回の『アラジン』だったらハーレム期のジャズや黄金期のハリウッドが持っていたような要素……という具合にね。全ての作品にユニークな語彙があるわけだから、それに助けてもらいながら、求められている音楽を作っていくということだね。

ーー映画にとって、音楽はどのような役割を果たすものだと考えていますか?

メンケン:音楽はものすごい力を持っている。そして、楽曲とスコアは違うものでもあり、同じものでもあるんだ。ストーリーテリングの要素が漂泊する瞬間が楽曲、そして「これからシリアスな場面ですよ」とか「ここはユーモアがあるシーンです」というようなニュアンスを教えてくれる、サブリミナルな効果があるのがスコアだね。映画において音楽は、その感情の構造を支えてくれるものだと思っているよ。

ーーちなみに、普段はどんな音楽を聴いているんですか?

メンケン:そうだな……。実は僕は昔からクラシックロック派なんだ(笑)。でもクラシック音楽は結構聴くほうだね。あとはどんな経験をしたいかによるかな。インスピレーションを得たい時はベートヴェンの交響曲、気持ちを高めたい時はドビュッシーやラヴェルの音楽を聴いているよ。

(取材・文・写真=宮川翔)

■公開情報
『アラジン』
全国公開中 
監督:ガイ・リッチー
脚本:ジョン・オーガスト、ガイ・リッチー
音楽:アラン・メンケン
出演:メナ・マスード、ナオミ・スコット、ウィル・スミス
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2018 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved
公式サイト:https://www.disney.co.jp/movie/aladdin.html

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