『わた定』はいよいよクライマックスへ

内田有紀が選び取った人生のバランス 『わたし、定時で帰ります。』はいよいよクライマックスへ

 「休んでも居場所はなくならない」

 働かなければ生活はできない。でも、生活がなければ働く意味がない。いつだって物事は表裏一体で、人生はそのバランスを取ろうともがく日々の連続だ。仕事かプライベートか。大切なのはどちらかしか選べない、それがこれまでの働き方の大前提だった。一度、走り始めたら立ち止まれない。流れに乗れなかったら、キャリアは終わり。白か、黒か。

 だが、『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)では、もっとグラデーションをつけて働くことができるのではないか、と問いかける。出産・育児を経て、職場復帰した賤ヶ岳八重(内田有紀)の環境は目まぐるしく変わり、自分でも予想していなかった出来事が次々と起こる。初めての育児に加えて、パートナーやその家族の人生も、自分の生活に直結する日々。これまでに経験したことのない大きな不安は、彼女を静かに追い込んでいく。

 もちろん、黙っていては社員1人ひとりが抱えている状況は、職場に理解されない。上司の福永(ユースケ・サンタマリア)は、意欲的な賤ヶ岳にチーフというポジションを任せる。抜擢されて嬉しい反面、仕事だけのことを考えていればいいわけではない今の自分にもどかしさを感じる賤ヶ岳。やりがいのある仕事と、幸せな家族との時間。どちらかなんて選べないと、もがく賤ヶ岳の姿は、働く人の多くが共感したのではないか。

 自分が何のために働いているのか。どちらかしかない自分なんて嫌だと思いながらも、両方手放したくないと必死になっている状況もまた、決して理想的ではない。人によっては「贅沢な悩み」と言われてしまうかもしれない。そうして口をつぐんで頑張った結果、限界まで追い込まれてしまう人が現代にはきっと溢れている。

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