『わた定』は多様化する幸せの形を探る “ハッピーエンド”とは異なる方法で描く、人々の変化
「家に帰ったってやることないし。アパートで1人でいるよりはマシってだけ。そのほうが気が紛れる。なんにもない人生のこと考えると滅入っちゃうから」
近年稀に見る大型連休となったGW明けに放送された、『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)第4話。効率よく仕事を進めて定時で帰る主人公・東山結衣(吉高由里子)に対して、フロントエンジニアの吾妻(柄本時生)が「会社に住み着いている」と言われるほど、ひどいサービス残業をしていることが発覚する。
決して仕事ができないわけではないのに、集中して作業を進めることをせず、わざわざ退勤処理までして会社に泊まり込む。誰に強制されたわけでもなく、自ら会社に居続ける非効率的な生活に、結衣は首をかしげる。
だが、先述した吾妻の言い分を聞いて、ドキッとする人もいるのではないだろうか。人よりも秀でている才能もない。絶対に叶えたいという夢もない。めざすべき目標もない。そんな“何もない“自分を直視するよりも、“仕事がある“と思えたほうがいくらかマシだ、と。
働き方改革では、残業時間や休日日数が厳しく管理される。だが、一律にオフの時間が増えたとして、「何をしていいのかわからない」という人も少なくない。10連休を目の前に喜ぶ人もいれば、「そんなにいらない」と困惑した人がいたように。
よく耳をすましてみると、ドラマの登場人物たちもまた、どこかで戸惑っている。「プライベートより仕事を優先すべし」と教わってきた世代なら特に。どんなに体調が悪くても出社する皆勤賞女・三谷(シシド・カフカ)も「ないんですよ。やることが。定時に帰っても……」と、中華料理屋でボヤいていたし、仕事ができるがゆえに、ワーカーホリックとなり結衣との婚約が破棄になった種田(向井理)も「仕事だけしかないのかも」とつぶやいていた。
「やりたいことって、別に大きな夢とか目標じゃなくても、自分が楽しめることだったらなんだっていいんじゃないかな。人生の使い方なんて、人それぞれだと思うんだよね」と言う結衣自身もまた、定時で上がってビールを飲み、恋人の巧(中丸雄一)とおいしいものを食べながら、時折「これが私の幸せだ」と言い聞かせているように見える場面がある。