『レゴ(R)ムービー2』は未来の可能性を暗示する 物語上のさらなるテーマの追求へ

 サイケデリックなまでにカラフルでユーモアにあふれていた『トロールズ』の監督マイク・ミッチェル、そして今回、アニメーション・ディレクターを務めたトリシャ・ガムは、ここではしっかりと、幼い子どもの前衛的な感性と、成長するにしたがって変化した、女の子の価値観による、新たなレゴ世界のヴィジュアルを楽しくきらびやかに描くことに成功している。また、前作から引き続いての印象的な劇中曲「Everything Is AWESOME!!!(すべては最高)」に対抗する、ポップソングの権化のような「Catchy Song(キャッチー・ソング)」も、同様の意味で登場する。

 ただ、レゴ映画が数作撮られたことで、映像的には、第1作にあった新鮮な驚きが薄まってしまっているのは確かである。本作は十分な仕事をしつつも、その部分では堅実な仕事の枠のなかに収まっているといえる。それは映像面において、ロード&ミラーが前作でかなりのところまでやり尽くし、レゴを使った表現をすでに極めるようなところまでいってしまったからではないだろうか。これ以上のインパクトを与えるには、前作の表現を一部否定するくらいの姿勢が必要になるだろうが、本作においては、そこまでの必要は感じなかったというところだろう。

 むしろここでロード&ミラーがやりたかったことは、物語上のさらなるテーマの追求であるように思える。前作で描かれた創造性の大事さや、寛容な精神を持つこと。本作もそれは全く同じだが、妹の世界が侵食してくる本作では、性別や年代の違いを置くことで、価値観や感性の違う相手を受け入れることの重要さを強調している。

 だが、本作が言いたいことは、子どもたちに仲良くすることを教育するということにとどまらず、もっと先を照らしているように思えるのである。人種差別や性差別が根底にあるヘイトクライムが頻発し、偏見によって排外されるマイノリティの人々が絶えないように、アメリカをはじめ、世界中で多くの悲劇が起こっているのが社会の現状である。

 その原因の一端は、他者の特徴や異なる文化・価値観を認めず、線引きすることからきているのではないだろうか。自分勝手な態度を改め、それらを受け入れれば、そこに新しい世界が広がっているはずだ。そこでは、お互いの交流によって様々な創造的発見も期待できるし、何よりその過程は、豊かで楽しい体験になり得る。“否定し合い、分断される社会”と、“寄り添って互いを認め合う社会”。本作で描かれるレゴの世界は、我々の社会のあり得る未来の可能性を暗示している。どちらの未来が訪れるかは、我々が他者に払う敬意と寛容さにかかっているのだ。

 友情の美しさや、家族の愛情の大切さをただ描くだけの子ども向け作品は多い。しかし本作はそれだけでなく、子どもに対して、自分の行動には責任がともなうということを、丁寧に伝えている。身勝手な大人たちによる無責任な行動で社会問題が深刻化しているなか、このようなテーマを広く伝えようとする本作の姿勢は、賞賛されるべきではないだろうか。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『レゴ(R)ムービー2』
全国公開中
監督:マイク・ミッチェル
脚本:フィル・ロード、クリストファー・ミラー
声の出演【字/吹】:エメット&レックス・デンジャーベスト役:クリス・プラット/森川智之、ルーシー/ワイルドガール役:エリザベス・バンクス/沢城みゆき、バットマン役:ウィル・アーネット/山寺宏一
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2018 WARNER BROS. ENTERTAIMENT INC.
公式サイト:www.legomovie.jp

関連記事