ジョン・ラセターの移籍は何を意味する? ディズニー/ピクサーにみる、アニメーション界の展望

 現在、ディズニー/ピクサーのシェアを奪うことを目指し、「スカイダンス・アニメーション」のライバルとなるような既存のアニメーションスタジオの数は、アメリカだけでも少なくない。『ミニオンズ』(2015年)が好評な「イルミネーション・エンターテインメント」、『レゴ(R)ムービー 2』(2019年)の「ワーナー・ブラザース・アニメーション」、『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018年)が記憶に新しい「ソニー・ピクチャーズ アニメーション」、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(2016年)の「ライカ」、『カンフー・パンダ』シリーズの「ドリームワークス・アニメーション」、そして『アイス・エイジ』シリーズの「ブルースカイ・スタジオ」などだ。

 ラセターが統括してきたディズニー/ピクサーが、これまでそれら強力なスタジオに対して圧倒する存在でいられたのは、両スタジオに業界を革新し続けるスピリットが存在したからであろう。今後、それらの追撃をかわしていけるかどうかは、ラセターがどれだけスタッフにその核を伝えられたか、そしてそれに触発される新たな才能の出現にもかかってくるはずだ。さらに、混沌とし始めた状況のなか、ラセター擁するスカイダンス参入によって業界の趨勢がどのように変化するのか。頂点を奪い合うアニメーションスタジオの戦いは、いままで以上に目が離せなくなった。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

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