ピエール瀧出演『麻雀放浪記2020』公開決定に、東映・多田憲之社長&白石和彌監督が見解を示す

白石和彌監督

 この数カ月、出演者の逮捕による映画の公開中止が続いている。そういった中、現在世間では白石監督も発言していた「作品に罪はない」という声が上がっている。このことに対して、多田は「公開が中止や延期、再編集などは、映画会社や製作委員会の判断だと思いますが、東映として、私個人としましても、『ちょっと行き過ぎだな』という印象は持っていました。総力を上げて作ったものをボツにしていいのかというのは、甚だ疑問を持っておりました。事実、東映にあるとは思っていませんでしたので、当事者になった時にかなり私自身も悩みました。株式会社ということ、コンプライアンスということもあり。それでも、映画会社の責任として、公開したいということを社員のみなさんに伝えて、『みなさんを説得しましょう』という形になりました」と述べる。

 この多田の“行き過ぎ”という思いについて記者から質問されると、「他社の判断に対すること、風潮としてになりますが、この10日間で委員会、社内でかなり厳しい判断をしていったのですが、マニュアル的にやることが果たしていいのかという疑問は持っています。社内のコンプライアンスということであれば、社内でもおかしいんじゃないかということもあるかもしれませんが、これは真摯に説得していきたいということと、少々株価が落ちるかなということは覚悟しております」と東映としての方針を示した。

 白石は「作品には罪がない」という思いについて「どんな罪も罪だと思いますし、その中でどういう映画のテーマなのか、罪を犯した者がどのような役のポジションにいてとか、いろいろな状況があると思うんですけど、そのような議論なく一様に社会の中で決まっているかのように蓋をしてしまうようなことはよくないんじゃないかなというのは、個人的には思います。上映できないというのが特例であってほしいというのが、作り手としての願いです」と改めて自身の判断を述べる。

 また白石はピエール瀧容疑者について、「監督として大きく引き上げてくれた一人だと思っていて、そこから僕自身、彼が持っているキャラクターと男っぷりの良さとか、いろんな男惚れをして、ここまで通算5本させていただきました」とこれまでの感謝を伝えた上で、スタッフや容疑者の家族を思い、「今は馬鹿野郎としか言いようがないし、自分の罪を反省して、これからどういう人生を歩んでいくか分からないですが、まずは治療して、人として歩いてほしいなという思いしかない」と複雑な心境を明かした。

(取材・文=渡辺彰浩)

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