『翔んで埼玉』は原作より盛大な“ディス”が炸裂!? 埼玉県は今一番オイシくて幸せな県
伝説のマンガ『翔んで埼玉』の実写版が2月22日から全国公開され週末の興行収入ランキング1位を獲得するほどの大ヒットを飛ばしている。
簡単なプロットを言うと、東京都民が埼玉県民を極端に差別している架空の日本社会を舞台に、差別をなくし埼玉の地位向上をもくろむ埼玉解放戦線の指導者・麻実麗が反乱を起こすという物語。原作は『パタリロ!』で知られる魔夜峰央が1982年から83年にかけて連載していたギャグマンガだ。当時の魔夜峰央は漫画家としてステップアップするために出身地新潟から都心に近い埼玉に転居したばかりで、自身が住む埼玉県をおちょくる目的で本作を考案。ちょうどタモリが『森田一義アワー 笑っていいとも!』(フジテレビ系)で発言して以来、「ダ埼玉」や「く埼玉」というワードが流行り始めていた時期だった。ところが魔夜は連載途中で横浜市に引っ越してしまい、「これでは埼玉県をただ馬鹿にする漫画になってしまう」と連載を中断、2018年現在まで『翔んで埼玉』は未完の作品となっている。
しかし2015年にSNSなどで本作が話題となり、宝島社から復刊。発売から1年ほどで発行部数50万部を超える大ヒットとなり、晴れて『のだめカンタービレ』や『テルマエ・ロマエ』の武内英樹監督の手で実写映画化されることとなった。
30年以上前の一巻しかない未完の原作は、武内監督がさらに独自の解釈を加えて映画化するには最適の題材だった。まず第一の改変ポイントとして原作の埼玉人が極端に差別される世界はあくまで都市伝説上の昔の日本ということになり、そのエピソードを現代の埼玉で暮らすとある一家がカーラジオで聞くという構成になっているのが巧い。都市伝説というファクターがかかったことにより、原作よりさらに容赦ない埼玉ディスが展開されている。
また、現在45歳のGACKTが高校生の麻実麗を、彼を好きになってしまう東京都知事の息子・壇ノ浦百美を二階堂ふみが自身初の男役で演じている。他のキャストも宝塚っぽさを意識したという濃い顔ばかりなのもフィクション度が敢えて増すようになり、都市伝説の世界観を強化している。
一方の埼玉イジリ要素も、30年以上の時を経て県庁所在地が「さいたま市」と平仮名になったり、様々なアンケートで郷土愛全国ワースト、夏に行きたい県ワースト、貧乳率1位、90年代に住みやすい県ランキング6年連続ワーストになるなどの現実に照らし合わせてさらにパワーアップ。埼玉県民であるか否かをチェックするために踏み絵代わりに草加せんべいを踏ませるなど原作にないギャグもてんこ盛りだ。また、「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ!」などの原作の名台詞もしっかり入っている。「中途半端にやると逆に失礼」と武内監督が語る通り、振り切ったイジリっぷりなのだ。
しかし武内監督による最大の改変ポイントは、「埼玉ばかりいじられるのはズルい」と自身の出身地・千葉県へのイジリ要素も入れてきたこと。何でもかんでも「東京○○」と東京の威を借りている様を盛大にディスっている。