『ハケン占い師アタル』杉咲花の豹変ぶりが好評 主役としての力強さを備え、さらなる進化

 前述したように、劇中で感情を爆発させ、平時との大きな変化を見せる役は、過去にも経験している杉咲だが、本作はこれまでの役柄と大きな違いがあるように感じられる。それは自らが主体となって、この爆発する瞬間を作り出しているという点だ。『夜行観覧車』では母親役の鈴木京香、『トイレのピエタ』では余命宣告された青年役の野田洋次郎、そして『湯を沸かすほどの熱い愛』でも母親の宮沢りえという俳優(野田はアーティストだが)たちが大きな存在としているなか、受動的に感情を爆発させていくが、今回は自身から仕掛け、相手を引き込んでから、主導権を持ったままスイッチを入れる。ある意味、大きな感情の変化を自己完結させなければならないのだ。

 そんな難易度の高いシチュエーションも、違和感なく、物語を成立させる演技力は「感度の高さ」にプラスして、自分から物語の流れを作れる力強さも増しているように感じられる。

 ここ最近は『花のち晴れ~花男 Next Season~』(18年、TBS系)で学園もののラブストーリー、映画『パーフェクトワールド 君といる奇跡』(18年)ではストレートな恋愛映画でヒロインを演じた。当時筆者が担当したインタビューで本人は「こういう作品に縁がないと思っていた」と語っていたように、新しいキャラクターへの挑戦が垣間見えた。さらに昨年末は『ダウンタウンのガキの使い!大晦日年越しSP!絶対に笑ってはいけないトレジャーハンター24時』(日本テレビ系)で、バラエティ番組というシチュエーションのなか、振り切った演技で大いなる瞬発力を見せつけ、コメディエンヌとしての可能性を示した。

 これまでは、自分自身で「“こういう作品だけでいいかな”という決めつけがあった」と語っていた杉咲だが、ラブストーリーやコミカルな演技に挑戦することで、自分でも予想できない自分との出会いがあったという。「まずは一回挑戦してみよう」という気持ちでスタートした20代。今後、女優としてさらなる広がりを見せていきそうな杉咲からは目が離せない。

■磯部正和
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。

■放送情報
木曜ドラマ『ハケン占い師アタル』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00~21:54放送
出演:杉咲花、小澤征悦、志田未来、間宮祥太朗、志尊淳、野波麻帆、板谷由夏、若村麻由美、及川光博
脚本:遊川和彦
音楽:平井真美子
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:山田兼司(テレビ朝日)、山川秀樹(テレビ朝日)、太田雅晴(5年D組)、田上リサ(5年D組)
演出:遊川和彦、日暮謙(5年D組)、伊藤彰記(5年D組)
制作協力:5年D組
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日

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