『まんぷく』菅田将暉、安藤サクラから“人徳”を学ぶ 人との交流において光る秀逸な演技

 そして、東が福子たちに寄り添おうとするもう一つの動機は、福子たちの“人徳”にあるのだろう。今週の第73話で、福子たちの周りにはいい人ばかりがいる理由として、「それはお二人の“人徳”ですよ」と話していた。例えば、ハナちゃん(呉城久美)が福子たちに援助をしてくれたのも確かにその通りである。東の言う“人徳”はきっと他の人々にも当てはまる。久しぶりに登場した恵(橋本マナミ)や牧(浜野謙太)、野呂(藤山扇治郎)も同じである。恵や牧が今週の放送において、「味方」と言ってくれたのも、それは福子たちが持つ“人徳”があってこそ。そういう意味において、東自身もまた二人の“人徳”に魅せられた人間なのだ。今週の最後の放送で、東は「たくさんのことを学ばせていただきました」と礼を言っていた。その感謝の気持ちは、ひょっとすると“人徳”が人と人を結びつけることを学べたことなのかもしれない。

 初めて登場したときはどこかおとなし気な印象があったものの、東の弁護士としての意地は凄まじいものであった。例えば、財務局の増岡と電話でやりあうときの彼は、実に堂々としていた。「訴えを取り下げないなら裁判で争います。こっちは何年かかってもいいんだ!」と怒鳴る増岡に対して、「こっちもです!」と語気を強めて言い返す。放送の中で、人のために汗を流して、寄り添おうとする東の姿勢がよく光っていた。今年の良作ドラマの一つである『dele』(テレビ朝日系)では、菅田将暉が演じる人物はそれぞれ異なる境遇にある人間と出会い、ときにひたむきに向き合ってきた。様々な事情がある人物に向き合う芝居は菅田の大きな武器の一つであるようだ。『まんぷく』と『dele』とではシチュエーションや演出、菅田のキャラクターなどを含めて大分異なるものの、人との交流で生まれる温かみを伝える点において、菅田の芝居は秀逸である。

 さて、早くも10月の放送が始まって以降、すでに折り返し地点に到達した『まんぷく』。翌年からは新たなキャラクターが続々登場し、さらに『まんぷく』ワールドを盛り上げていく。平成最後の朝ドラを1月からも楽しんでいきたい。

(文=國重駿平)

■放送情報
NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)〜2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平/桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、瀬戸康史、中尾明慶、橋爪功、松坂慶子ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/

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