年末企画:今祥枝の「2018年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 “シーズン2の壁”を越える作品が続出

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2018年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優・女優たちも紹介。2018年に日本で放送・配信された作品(シーズン2なども含む)の中から、執筆者が独自の観点で10作品をセレクト。第13回の選者は映画・海外ドラマライターの今祥枝。(編集部)

1.『ジ・アメリカンズ シーズン6』(FX・Netflix)
2.『英国スキャンダル~セックスと陰謀のソープ事件』(BBC One・ WOWOW)
3.『The Good Fight/ザ・グッド・ファイト シーズン2』(CBS All Access・Amazonプライムビデオ)
4.『バリー』(HBO・Amazonプライムビデオ)
5.『アトランタ シーズン2』(FX・FOXチャンネル)
6.『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語 シーズン1&2』(Hulu・Hulu)
7.『レギオン シーズン2』(FX・FOXチャンネル)
8.『KIZU-傷-』(HBO・スターチャンネル)
(2019年発売予定のDVDタイトルは『シャープ・オブジェクト KIZU-傷-:連続少女猟奇殺人事件』)
9.『マニアック』(Netflix・Netflix)
10.『GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング シーズン2』(Netflix・Netflix)
(左側は本国の放送局、右が日本で自分が視聴したディバイス)

 編集部の規定により2018年に日本に上陸した作品、個人のルールとして該当シーズンは全話視聴済みの作品から選んだ。

 『ジ・アメリカンズ』の最終となるシーズン6は見事な幕引きだった。これ以上のラストは望めなかったと思う。最終回は泣くとか感動するというより放心状態に陥るといった感じ。近年主流になりつつある10話程度で完結するリミテッド・シリーズやアンソロジー・シリーズで、完成度の高い作品を作ることが簡単だとは全く思わないが、何シーズンも続くシリーズを最終的に傑作たらしめることは至難の技である。これぞ現代のドラマの最高峰。

 全体として2018年は、2016〜17年に鮮烈な印象を残した新作のシーズン2の動向に注目した年でもあった。シリーズが続いていく作品をキャラクターの成長・変化とともに追いかける楽しみはドラマならでは。しかし、シーズン2は鬼門だ。長期戦を見据えて、その作品の方向性がより明確に見えてくるのもシーズン2だし、シーズン1の評価が高ければ高いほどハードルは高くなる。シーズン2こそ作り手のさらなる力量が試されると言ってもいいし、視聴者に試される感じがまた楽しい。だが、そうしたハードルを軽く超えてきた作品のなんと多かったことか!

 『The Good Fight/ザ・グッド・ファイト2』は、トランプ政権誕生の衝撃を必死に受け止め、否を唱える強い姿勢を打ち出したシーズン1から一年を経て、番組の作り手の戸惑いとこの時代をどう生き抜くかといった覚悟を、スーパーリベラルの主人公ダイアンを通して伝える洗練された手腕が見事だった。「私たちは恐ろしい時代に生きているのね」とつぶやくダイアンの言葉は、ディストピアを描いて現在進行形の恐怖を伝える『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』など多くの秀作に通じるテーマでもあるだろう。もっとも、狡さとしたたかさを備えたタフな女性像は観ているだけで単純に元気が出るし、『グッド・ワイフ』の時からダイアンは大好きなキャラクターだ。

 『アトランタ2』はシーズン1も傑作なのだが、シーズン2はより落ち着いて物語を楽しむことができたという意味では『ザ・グッド・ファイト』のパターンに通じる。特に第6話「テディ・パーキンス」は多くの媒体でベストエピソードに選ばれる出色の出来だが、個人的には第10話「黄色いシャツ」が白眉。登場人物の関係性の掘り下げ方に次のシーズンへの期待が募る。シーズン3への期待で言えば、こちらも素晴らしい『マーベラス・ミセス・メイゼル2』はショウビジネスの世界に本気で飛び込むと思われるシーズン3の方が自分の好みの展開になりそうな気がする。

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