自宅をプライベートな劇場に サウンドバーからAVアンプまで、オーディオ機器導入で変える映画体験
インターネットを利用した動画配信サービス(VOD)利用者の数が伸びている。ソフトの返却を必要とせず、好きなときに好きな映像作品を観ることができるシステムは、時間のない現代人の生活によりフィットし、家庭で映画作品を楽しむ人をより増やし、作品の視聴環境を劇的に変化させつつある。
制作費をかけたドラマ作品も増加している。デヴィッド・フィンチャーなど有名な映画監督の起用や、キャリー・ジョージ・フクナガ監督のように新しい才能を育てたりなど、話題性や制作費以外にも、作品の質が向上することによって、映画作品とドラマの境界線が曖昧になってきている。さらに配信サービス会社が独自に制作したオリジナル作品も出現し、そこでしかその作品を観ることができないというケースも生まれている。
このような変化が示しているのは、面白い作品、新しい時代の作品を追っていこうとするなら、これからは映画館での鑑賞以外に、家庭で視聴する機会が必然的に増えていくだろうということである。
そうなってくると、やはり家での視聴環境をより快適なものにしたいと思うのが人情。できるだけ映画館に近い環境を整えたいと思いながら、そして配信サービスなどに加入しながら、小さなTVやスピーカーのまま何年も過ごしてしまっている人は多いのではないだろうか。とくに、年々薄くなるディスプレイに付属するスピーカーは小型化されていることが多く、そのままの音では物足りないと感じられる場合が少なくない。
近年は、大きく美麗な4K対応などのディスプレイが安価になってきて以前より手頃に感じられるが、問題はやはりスピーカーなのではないだろうか。スピーカーは一見してその魅力が分かりづらく、専門性が高いように感じがちだ。しかし、せっかく映像鑑賞用にスピーカーを新しく買うのなら、映像作品の仕様に対応し、より高度な立体音響が楽しめるものが理想的だ。
筆者が映画作品の立体的な音響に衝撃を受けたのは、映画館で鑑賞した、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』が初めてだった。登場人物たちが恐竜に囲まれるシーンでは、背後からも恐竜の発する音が聴こえて、観客である自分も、恐竜のテリトリーに潜入した登場人物たちの感情を共有し、画面の奥にも自分の背後にも世界が広がっているような感覚を味わうことができた。同じように2次元の平面を眺めていても、音響の演出や表現力の違いによって、映像の意味すら別のものに変質させてしまう。
音にこだわりのある映画監督は、「ぜひ劇場や、立体的なサウンドシステムで体験してほしい」と発言することがある。せっかく力を入れて音響にこだわった演出を施しても、それをノートPCやスマートフォン、スピーカーの貧弱なTVでそのまま再生すると、驚くほど陳腐になってしまうことがある。2.1chや5.1chなどのサウンドシステムに対応している作品は、視聴する人を立体的な音響で楽しませるためにデザインされているものなので、スピーカーがそれに対応していなければ、音響の演出を楽しむという意味では、不十分ということになってしまうのだ。