小池徹平のキラースマイルに感じる“光と影” 『大恋愛』戸田恵梨香とムロツヨシの関係をかき回す

 逆境の中で愛はどれほど試練に耐えることができるのか、生きる希望を愛に託した男女の出会いから10年を描くドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)。第2章は、若年性アルツハイマー病を発症した女医の尚(戸田恵梨香)と、彼女の支えとなる真司(ムロツヨシ)との穏やかな結婚生活がスタートした。しかし、小池徹平演じる若年性アルツハイマー病を患う松尾公平が登場した途端、物語の色合いが変わる。

 病院で初めて会った公平は、病気が発覚した途端に妻に去られ、生き甲斐である保育士の仕事も失いそうになっていた。尚と真司には初対面でいきなり「井原先生(松岡昌宏)の患者さんですか?」と声をかけ、看護師には「僕の前に診察を受けていたご夫婦、どちらがご病気なんですか?」と質問していた。ただ単純に同じ病気だから気になる、というよりも同じ病気なのに真逆の境遇であることに瞬時に反応した、という含みのある表情を見せ、爽やかな笑顔が印象的なだけに、より不気味に感じられるのだ。

 病気の不安を抱える尚にとって真司という存在が希望を与えてくれることは明らかで、真司にとっても小説を再び書くきっかけを与えてくれた尚は希望そのもの。病気によって絶望の淵にある公平の心の闇の深さは計り知れないものがあり、だからこそ小池徹平のあの完璧なキラースマイルが観るものの心をざわつかせる。

 愛も希望もない状態で、そのうえ大切な仕事まで失いかけている公平が何を望んでいるのか、尚への執着は病気のせいなのか、それともそれ以上の感情があるのか。物語を大きくかき回す役柄を演じる頼もしさは、ミュージカル『1789-バスティーユの恋人たち-』をはじめ、ドラマ以外でもさまざまな舞台で成功を収めてきた自信からくるものでもあるのだろう。

 主人公の尚を演じる戸田恵梨香と小池徹平は1年半前、2017年4月期のTBS系金曜ドラマ『リバース』でも高校時代に恋人同士だったという役柄で共演している。小池が演じたのは、大学の仲間と旅行中に不審な事故死を遂げた広沢由樹。その死の謎を巡る話において、やはり小池の笑顔は光っていた。青春の光と影、輝きが強いほど影は濃くなり、後悔や罪悪感といった負の感情は強く感じられる。主演という立場ではないが、『リバース』が魅力的な物語になったひとつの要因には、間違いなく小池の存在があった。『大恋愛』の第6話放送後には、『リバース』で広沢の死の謎を解くある食品がSNSでも話題になっていたが、それだけ小池の演技が印象に残っていたということだろう。

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