松田龍平、『泣き虫しょったんの奇跡』での飛躍 『獣になれない私たち』で男女ともに憧れる男へ?

 一方で、松田自身は今までの独特の雰囲気も武器にしつつ、俳優としてさらなるステップアップを見せている。現在公開中の主演映画『泣き虫しょったんの奇跡』での松田は、今までの“ひょうひょうとしたキャラクター”として、抑えられてきたエモーションを垣間見せる。先述のドラマ愛好家・麦倉氏も、『泣き虫しょったんの奇跡』での松田の演技について賞賛を惜しまない。

「『泣き虫しょったんの奇跡』で松田さんが演じている瀬川晶司は、前半はこれまで同様、悪い人ではないんだろうけれど、感情表現が少なく何を考えているか分からないマイペースな人物という印象でした。しかし、中盤にプロ棋士になれないという大きな挫折を味わい、感情が決壊します。その後、再起を遂げる際には、前半よりも“人間らしい”佇まいとなり、周囲の人たちの協力も得ながら、よりエモーショナルになっていく。その様子は新鮮で、“ニュー龍平”の誕生といっても過言ではない驚きがありました」

 新たな一歩を進みつつある松田は、野木脚本‪作品でどのような演技を見せてくれるのだろうか。

「キャラクター設定を重視する野木さんのオリジナル作品ということなので、今までの松田さんの“ひょうひょうとしたキャラクター”をある程度活かしつつも、最終的にはそれを崩しにかかってくるような気がします。『逃げ恥』同様、新垣さんとの掛け合いや駆け引きを描きながら、彼の“ひょうひょう”とした佇まいの内側に潜むエモーションをうまく引き出していって……恐らくそこが、このドラマのひとつの見どころになるのではないかと期待しています」

 野木も過去のインタビューでは、出演者に合わせて、印象が残るようなキャラクター設定を重視していると語っており、野木目線でのプロデュースによって、さらに新しい松田龍平を見ることができるかもしれない。

 松田は、今まで大島渚監督作『御法度』や、『泣き虫しょったんの奇跡』でも再タッグを組んだ豊田利晃監督作『青い春』など、男性クリエイターの寵愛を受け、「男が憧れる男」像の1人を担ってきたといっても過言ではない。野木視点による女性とのリレーションシップを演じることで、『逃げ恥』での星野源、『アンナチュラル』での井浦新に続いて、『獣になれない私たち』で、松田が「男女ともに憧れる男」へと歩を進めるのではないだろうか。

(文=島田怜於)

■放送情報
『獣になれない私たち』
日本テレビ系にて、10月10日(水)スタート 毎週水曜22:00放送
出演:新垣結衣、松田龍平、田中圭、黒木華、菊地凛子、田中美佐子、松尾貴史、山内圭哉、犬飼貴丈、伊藤沙莉、近藤公園、一ノ瀬ワタル
脚本:野木亜紀子
演出:水田伸生
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:松本京子、大塚英治
協力プロデューサー:鈴木亜希乃
制作会社:ケイファクトリー
製作著作:日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/kemonare/ 

■公開情報
『泣き虫しょったんの奇跡』
全国公開中
監督:豊田利晃
脚本:瀬川晶司『泣き虫しょったんの奇跡』(講談社刊)
音楽:照井利幸
出演:松田龍平、野田洋次郎、永山絢斗、染谷将太、妻夫木聡、松たか子、イッセー尾形、小林薫、國村隼
製作幹事:WOWOW/VAP
制作:ホリプロ/エフ・プロジェクト
(c)2018『泣き虫しょったんの奇跡』製作委員会 (c)瀬川晶司/講談社
公式サイト:http://shottan-movie.jp/

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