綾瀬はるかの名パートナーに? 上白石萌歌、『義母と娘のブルース』に一瞬で溶け込む天性の才能

上白石萌歌、『ぎぼむす』に見る天性の才能

 このCMシリーズは南阿蘇村を舞台とした1つの青春劇となっている。当初、熊本地震の影響でで半分以下の路線しか復旧していなかった南阿蘇鉄道が全面協力し、彼女の歌声は復興を願うダブルミーニングとして、実に感慨深いものになっている。セリフがなく、アカペラの歌声と表情だけで感情を表現し、見るものを感動させてしまうこのシリーズは、萌歌の魅力が十二分に詰まっている。また、このCMで男子高生を演じている井之脇海が『義母と娘のブルース』で、萌歌演じる宮本みゆきの幼なじみ・黒田大樹役というのも面白い。

 さて、『義母と娘のブルース』は、バリバリのキャリアウーマンで、鉄仮面のような表情で事務的に行動する岩木亜希子(綾瀬はるか)が、子持ちの男と結婚し、母親になろうと一生懸命に奔走する10年間を描く物語。萌歌が登場したのは第6話から。それまではみゆきが幼少時代の話で、義理の母と娘という距離のある関係が続き、父親が急逝、お互い気を張っていたものが決壊し、遂にみゆきが「お母さん」と呼ぶ。そして9年後の話になり、高校3年生となったみゆきが登場する。しっかり者だった幼少期とは反対に、忘れ物などちょっと抜けたところもあり、「この9年間に何があったんだ」と思わせるが、明るく性格が良い子に育ち、亜希子によって大事に育てられてきたことが分かる。

 視聴者は幼少期のみゆきに思い入れがあるだけに、萌歌に馴染むまでに時間がかかると思われたが、一瞬にしてドラマに溶け込んでいったのは萌歌の繊細な演技に他ならない。亜希子と正反対のような緩い性格に見せて、時より見せるシャンと背筋が伸びたハッキリとした物言いや、育ててくれた亜希子に感謝し期待に応えたいという気持ちを抱えていたりと、自然と血縁関係以上の母娘になっていることを見事に表現している。

 幼少期のみゆきを引きずりつつ、綾瀬はるかの演技をトレースし視聴者を納得させる難題を、自然に見せる女優としての凄さ。そして何より、物語がウェットになりそうなところを、カラッと爽やかにしてまう萌歌は、天性の才能と言っていだろう。途中参加にも関わらず、もはや役者として綾瀬はるかの名パートナーとなり、ドラマをさらに面白くするブースターとなったのは、彼女のキャリアから言えば当然の結果なのかも知れない。ミュージカルだけでなく、ドラマでも実力を発揮した萌歌は、まさに大女優になる器を持った存在だ。ドラマはいよいよ最終章へ突入する。

(文=本 手)

■放送情報
火曜ドラマ『義母と娘のブルース』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜23:07放送
出演:綾瀬はるか、竹野内豊、佐藤健、横溝菜帆、川村陽介、橋本真実、真凛、奥山佳恵、浅利陽介、浅野和之、麻生祐未
原作:『義母と娘のブルース』(ぶんか社刊)桜沢鈴
脚本:森下佳子
プロデュース:飯田和孝、大形美佑葵
演出:平川雄一朗、中前勇児
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/gibomusu_blues/

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