イベント上映、配給、ソフト化まで Gucchi’s Free School主宰・降矢聡氏に聞く“自主”の醍醐味

「自主でやるメリットは、結局“責任がない”ということ」

ーーイベント上映、配給、配信、ソフト化の中では、ビジネス的な側面で最も成功していると言えるのはどれなんでしょう?

降矢:やっぱり配給ですかね。ソフト化はかなりコストがかかってしまうのと、僕たちレベルの出し方だと、売れたとしてもたかが知れているし、上映イベントも会場費などコストがかかってしまう。そういった面で考えると、配給はその中では一番収入になっています。配給で得た収入で、どうにか次の作品の権利を得たり、上映会をやったり、ソフト化の資金を確保したり……というイメージです。

『キングス・オブ・サマー』

ーー『キングス・オブ・サマー』のBlu-ray&DVDリリースタイミングでは、ジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督が来日してプロモーション活動をしていましたよね。パッケージのタイミングで監督が来日するのは非常に珍しいと思うのですが、あれはどのような経緯だったんですか?

降矢:よくわからないですよね、僕も自分で引きました(笑)。実は、ロバーツ監督と小島秀夫さん(日本のゲームクリエイター、実業家)がお知り合いだということをネットの記事か何かで読んで知っていたんです。それで、ダメ元で小島監督に『キングス・オブ・サマー』Blu-rayのリーフレットの寄稿をお願いしたら、快く引き受けてくださって。その後、小島監督がお仕事でアメリカに行かれた際に、ロバーツ監督とお会いしたみたいで、日本でのソフト化の話をしてくれたんです。そうしたら、小島監督の秘書の方から、「ジョーダンがプロモーションを手伝いたいと言っています。ここに連絡してください」と、ロバーツ監督のメールアドレスをいただいて(笑)。すごくありがたいお話なので、早速ロバーツ監督に「今日本でソフト化を進めているので、よかったら日本のファンのためにメッセージ動画をいただけませんか?」と連絡したら、「動画もいいんだけど、日本に行くよ」と(笑)。費用も含め僕らではもろもろ工面できないし、初めはちょっとこっちも腰が引けて、動画でお願いしていたんですけど、ぜひ来たいと言ってくださったので、じゃあイベントを組みましょうとなったんです。

ーーある意味、奇跡的な流れだったんですね。グッチーズは今後も今の体制で続けていく予定なんですか?

降矢:周りからは結構「会社にすればいいじゃん」って言われるんですけど、基本的には、グッチーズをもっと大きくしようとか配給会社みたいにしてやっていこうとはあまり思ってはいないんです。とはいえ、今の形でずっとやりたいという気持ちが強いわけでもなく、今のベースの部分が崩れなければ、もうちょっと大きな展開をしても面白いかなと思ったりはしています。まずは、上映会や配給といった活動自体を続けられる限り続けたいなと。

ーー自主でやるのと会社として大きくするのとではまた大きな違いが生まれそうですね。

降矢:そうですね。自主でやるメリットとしては、結局“責任がない”ということかもしれません。失敗したら自分のお財布がただ単に痛むだけで、逆に成功したら潤う。全部自分の責任になるので、気楽だし、余計なことを考えないで済むんです。今自主でやっている一番大きな理由は、自分の好きな作品を好きな形で宣伝したいということに尽きますね。

『タイニー・ファニチャー』

ーー現在『タイニー・ファニチャー』が上映中ですが、今後のグッチーズの動きは何か決まっているんですか?

降矢:コメディ映画の上映会を企画中です。2016年に日本未公開の青春映画や学園映画を集めた「青春映画学園祭」という上映イベントを渋谷のユーロライブを中心に開催したのですが、またそれぐらいの規模でコメディ映画を5〜6本上映するイベントを開催したいなあという気持ちでいます。あとは、その「青春映画学園祭」に合わせて『ムービーマヨネーズ』という雑誌の創刊号を作ったんですけど、そろそろ第2号を作りたいなと思っています。今回はゲストの方におすすめのコメディ映画を挙げていただいて、その作品を上映するという形でもあるので、未公開という縛りではなくなるんですけど、日本でコメディ映画がもっと盛り上がればいいなと思って進めているので、こちらもぜひ注目していただきたいです。

(取材・写真=宮川翔/構成=島田怜於、宮川翔)

■公開情報
『タイニー・ファニチャー』
シアター・イメージフォーラムほかにて公開中
監督・脚本・主演:レナ・ダナム
出演:ローリー・シモンズ、グレース・ダナム、ジェマイマ・カーク、アレックス・カルボウスキー、デヴィッド・コール、メリット・ウェバー、エイミー・サイメッツ
撮影:ジョディ・リー・ライプス
編集:ランス・エドマンズ
音楽:テディ・ブランクス
製作:カイル・マーティン、 アリシア・ヴァン・クーヴェリング
2010年/99分/シネマスコープサイズ
公式サイト:https://www.tinyfurniture-jp.com

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