今期、もっとも観るべきドラマは? ドラマ評論家が選ぶ、平成最後の夏ドラマ注目作ベスト5
2018年、今シーズンのテレビドラマは、ほとんどが中盤に差し掛かった。現在は、TVerやFOD、Huluをはじめとするサービスが充実しており、話題作はどんなタイミングからでも1話から観始めることができる。各局、力の入った作品が並ぶが、本当に観るべきはどのドラマだろうか。ドラマ評論家の成馬零一氏に、夏ドラマから注目すべきタイトルのベスト5を選んでもらった。
1.透明なゆりかご(NHK)
金曜夜22時から放送されている産婦人科を舞台としたドラマ。1997年の産婦人科の実情を描いた本作は、看護実習生の青田アオイ(清原果耶)が院内で起きる妊婦の姿を真摯に見つめる姿が印象に残る。ここでは、出産も中絶も日常的なこととしてニュートラルに描かれている。原作漫画が絵柄のユーモラスさで緩和できていた残酷な真実を、本作は美しい映像で容赦なく描いている。重々しい緊張感が続くが、アオイの子供っぽい抜けたところがときどき出てくるのが、救いになっている。脚本は『リッチマン、プアウーマン』などのフジテレビ系の月9ドラマで知られる安達奈緒子。NHK地上波での連ドラ執筆は初だが、生真面目に対象をみつめる彼女のスタンスとNHKの相性は良く、今後の展開(例えば朝ドラ執筆)が期待できる。
2.恋のツキ(テレビ東京系)
木曜深夜に放送されているテレビ東京のドラマ。とにかくエロくて生々しい。名脇役として評価が確立されつつある徳永えりが主演を務める本作は、31歳の普通の女性が付き合っている彼氏に対して抱えている打算的な感情が、性欲とともに、しっかりと描かれている。同棲する恋人との性生活はもちろん、彼女が働く映画館で知り合った男子高校生への欲望もしっかりと描かれており、脱いではいないものの、テレビ東京の深夜ドラマとはいえ、ここまで描くのかと毎回、驚かされる。
3.dele(テレビ朝日系)
テレビ朝日系の金曜夜23時15分から放送されている探偵ドラマ。亡くなった人間のスマホやパソコンの中にある「デジタル遺品」を消去する会社で働く男たちを主人公にした異色のバディもの。見どころはなんと言っても主演の山田孝之と菅田将暉の掛け合い。物語がわからなくても二人の会話を見ているだけで、いつまでも楽しめる。キャラクターこそ違うが伝説のドラマ『傷だらけの天使』(日本テレビ系)の萩原健一と水谷豊の軽妙なやりとりを彷彿とさせる。