『あなたには帰る家がある』タイトルに込められたメッセージ 中谷美紀たちがたどり着いた“愛”

 だが、ここでひとつ疑問が。綾子に一瞬でも愛されたら自分の人生は満点だ……と尽くす太郎を、そしてこの先も続くであろう綾子のわがままを許す茄子田家を、はたから見ていると“これが幸せなのか?”と、ついつい考えてしまう。あまりにも太郎ばかりが綾子を受け入れ、変化しようと努力していくように見えるからだ。惚れた弱みだとしても、あまりの変わりように“無理していないかな”などと邪推してしまう。

 おそらく「何が幸せかなんて他人が決めることではない」というのが、このドラマのメッセージなのだろう。どの家だって客観的に見れば、“それが本当の幸せ?”という疑問は出てくる。真弓と秀明も別々に暮らすという結論が、真弓の「戻りたくない」壊れた夫婦時代ではなく、幸せだった恋人時代まで遡り、2人なりの心地いい距離感となった。この関係が、今後どのように変化するかはわからない。人生のうねりの中で、弱ったときにふと寄りかかりたくなる相手に愛を感じることもある 。近づいては「ない、ない!」となったり、離れては「やっぱり……」となったり。日々、相手と心地いい距離を確かめ合い、それぞれの幸せが見いだせれば、昭和の時代にもそして現代にもない形だとしても、自分にとって“帰りたい家”になるのだから。

(文=佐藤結衣)

■作品情報
金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』
出演:中谷美紀、玉木宏、ユースケ・サンタマリア、木村多江、駿河太郎、笛木優子、高橋メアリージュン、藤本敏史(FUJIWARA)、トリンドル玲奈
原作:山本文緒『あなたには帰る家がある』(角川文庫刊)
演出:平野俊一
脚本:大島里美
プロデューサー:高成麻畝子、大高さえ子
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/anaie/

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