林遣都が語る、『チェリーボーイズ』で感じた深い友情 「描かれていない部分をいかに想像してもらえるか」

「年々、演技に対しての考え方は変わっている」

ーー西海監督は本作が長編デビューとなります。現場では林さんの意見も汲んでもらったそうで。

林:監督には申し訳ないのですが、わがままを言ってしまいました。撮影が非常にタイトなスケジュールだったこともあり、松居さんの脚本をそのまま撮ることは物理的に不可能なシーンがあったんです。そんな中でも、なんとかなりませんかと相談させていただいたシーンがあって。

ーーそれはどのシーン?

林:国森が思いを寄せる笛子(池田エライザ)に告白をして、あっさりとフラれて、ビール瓶を投げるシーンです。僕の勝手なイメージでは、玄関先でフラれて、階段を駆け下りて、笛子の見えないところで発狂する、という形だったんです。でも、一連のシークエンスを笛子が住むアパートの敷地内でやらなくてはいけない。しかも笛子の住まいは1階。でも、それでは国森が発狂している姿は笛子に筒抜けだし、それは違うと思ったんです。監督さんや製作の方々が、歩道の撮影の許可を取ってくださって、完成した映画の形になりました。

ーー納得したふりをして帰宅するものの、抑えきれずに爆発してしまう。当初の予定通りでは、その感情の流れが分かりづらかったと思います。

林:これまでそういった意見を監督に言うことはほとんどなかったんです。でも、今回の現場では、西海監督にお会いしたとき、「林くんが思いを込めてくれればくれるほど、お互いで高め合うことができる」と言ってくださって。監督が最初にそう言ってくれたからこそ、このシーンも実現することができたと思います。

ーーともすれば、嫌悪感を持たれてしまう題材だと思うのですが、絶妙なバランスで、さまざまなしがらみに、もがき苦しむ青春映画になっていると感じます。

林:原作はどちらかというとコメディ寄りなんです。でも、松居さんの脚本はラストシーンの変更が象徴的なように、人間ドラマとして味わい深いものになっていました。その点に関して、演じる僕たちは読み解きながら応えないといけない責任がありました。最後も「泣き出す」の1文しかなかったのですが、そこにどれだけの思いが入っているのか、それを観ている方に感じてもらえたらと思います。

ーー演技者として、今後はどういった歩みを?

林:映像作品に出演させていただいているときは、変なテクニックを身につけるのではなくて、“その人になればいい”と思っていたんです。でも、舞台での演技を通して、演技者としての技術も必要だし、役者として勉強することは何よりも大事だと感じました。年々、演技に対しての考え方は変わっています。映画の場合は、だいたい2時間の間にひとりのキャラクターの人生を見せなければいけません。そのときに、作品の中で描かれていない部分をいかに想像してもらえるか。それを改めて感じたのは、波岡(一喜)さんの、『わろてんか』(NHK総合)天才落語家の団吾役の演技を観たときです。団吾が落語を披露するシーンがあるんです。現在観ている限りでは、落語を最初から最後まで披露されるわけではなくて、劇中ではほんの一部分なんです。その一瞬だけでも団吾が天才として、この世界で活躍していることが伝わってきました。波岡さんの凄さを感じると同時に、僕も今後見習わなければいけない部分だなと感じています。

※柳俊太郎の「柳」は旧字体が正式表記

ヘアメイク:SHUTARO(vitamins)
スタイリスト:菊池陽之介/YONOSUKE KIKUCHI

(取材・文・写真=石井達也) 

■公開情報
『チェリーボーイズ』
2月17日(土)よりシネ・リーブル池袋、渋谷TOEIほか全国ロードショー
出演:林遣都、栁俊太郎、前野朋哉、池田エライザ、石垣佑磨、岡山天音、般若、山谷花純、松本メイ、岸明日香、馬場良馬、吹越満、立石涼子
監督:西海謙一郎
脚本:松居大悟
原作:古泉智浩『チェリーボーイズ』(青林工藝舎刊)
主題歌:「GO! GO! Cherry Boy!」MANNISH BOYS(スピードスターレコーズ)
音楽:石塚徹×鈴木俊介
配給・宣伝:アークエンタテインメント
2018 年/日本/カラー/ビスタ/5.1ch/113 分/R15+
(c)古泉智浩/青林工藝舎・2018 東映ビデオ/マイケルギオン
公式サイト:http://cherryboys.net/

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