“ハッピーの悲劇”に視聴者も困惑!? 『やすらぎの郷』整合性のない展開にツッコミ

 何事にも予兆というか前兆があるもので、それは『やすらぎの郷』第20週のショッキングすぎる展開も例外ではなかった。「『やすらぎの郷』はシニア男性のドリーム全開!?  昭和的な女性観に物申す」という記事で、第12週までに散見された女性の描き方がひどいとツッコミを入れたのだが、その後も思わず唖然としてしまうような展開が続き、第20週でついに怒りが大爆発。再びツッコミを入れさせていただきますよ、脚本の倉本聰先生!

 第16週では、常盤貴子演じるコンシェルジュ・伸子が、46歳上でセクハラ発言ばかりしている真野(ミッキー・カーチス)に熱を上げ、自分から猛アタックして婚約。同時に、主人公の脚本家・菊村(石坂浩二)が、かつてのプラトニックな不倫相手・直美(清野菜名)の孫であるアザミ(清野2役)と対面。御年80歳間近にして20歳のアザミと「デートする」だの、アザミと会って「ドーパミンが出た、ギンギンだね」だのとのたまう、女性視聴者からすれば、お口あんぐりのシークエンスが続いた。このままではどうなってしまうのかと危惧していたところに、不安がずばり的中。第20週では、やすらぎの郷のバーテンダー、ハッピーことゆかり(松岡茉優)が仕事帰りの夜道で複数の男に拉致され、集団レイプされてしまうのだ。

 ジョディ・フォスターが『告発の行方』で自分をレイプした男たちを告発する女性を演じ、アカデミー賞主演女優賞を獲得してから約30年、連続ドラマ『真昼の月』で遊川和彦がレイプされた女性のトラウマを丁寧に描いてから約20年、今さら昭和の時代劇のようなレイプの描かれ方を目にするとは思わなかった。それまでは明るくポジティブで、菊村をからかうような無邪気なところもあったハッピーは“魂の殺人”とも言われるレイプ被害にあって、深い心の傷を負ったはずだ。それなのに、その扱いはあまりに軽く、やすらぎの郷に入居している往年のスターたちが若者をやっつけるための単純な装置、つまり暴力を正当化する理由として機能する。

 「ハッピーがまわされた」という情報を聞いた任侠役者“秀さん”こと秀次(藤竜也)は、殺陣師の那須(倉田保昭)、大部屋俳優の原田(伊吹吾郎)と共に、ハッピーを襲った若者たち(主犯はレッドゾーンという暴走族の通称マムシ!)のたまり場に乗り込む。秀次たちはハッピーのために義侠心を発揮したつもりかもしれないが、その場では完全に暴力を楽しんでいる。出入りだ出入りだ!とばかりに、ブラックスーツとポマードでばっちり決め、タバコをくゆらした秀次は、スターであった自分のことを「知らない」と言った若者をいきなり殴る。その最初の一撃を見て、那須は(秀さん、相変わらずやるなぁ)とばかりに痛快そうに笑っている。若者たちの急所を握りつぶし、叩きのめした秀次を見て、見守っていたやすらぎの郷の男性職員は「よっ! 秀さん」と声をかける。完全に秀次というキャラクターの見せ場になっていて、そこからレイプされた女性の心の痛みなどは伝わってこない。

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