『千と千尋』から『メアリと魔女の花』までーー神木隆之介、ヒット作を射止める声優としての実力

 スタジオポノック制作の映画『メアリと魔女の花』で、ピーター役を演じている神木隆之介。俳優としてのイメージが強い神木だが、『千と千尋の神隠し』(2001)、『ハウルの動く城』(2004)、『君の名は。』(2016)と、邦画の歴代興行収入ランキングトップ3作品にすべて出演しているなど、声優としてもまさに“神ってる”状態だ。声優を兼業している俳優・女優は少なくないものの、これほど安定したキャリアを誇り、ファンからの支持も厚い若手となると、彼の右に出る者はいないのではないだろうか。

 弱冠7歳で『千と千尋の神隠し』の坊役として声優デビューを果たした神木。その演技力は宮崎駿監督からも折り紙付きで、『ハウルの動く城』や『借りぐらしのアリエッティ』(2010)にも出演し、ジブリ作品の常連となった。幼い頃のアフレコ現場では「特に何も考えずに演技していた」と語る神木だが、成長していくにつれてアニメへの研究を深め、声優としての地盤を固めていったという。

 神木は、プライベートでは“おひとりさま”行動を好み、漫画やライトノベル、アニメ好きを公言している。『君の名は。』への抜擢以前から新海誠監督の大ファンでもあり、過去作品を繰り返し視聴して、声優の演技や言い回しの傾向を分析していたそうだ。俳優としての演技力が確かであっても、声優としても同じように評価されるとは限らない。しかし、神木はかねてから持ち合わせていた“オタク気質”も相まって、声優と俳優の間に存在する差分を埋めることができたのではないだろうか。

 子役時代から現在に至るまで、外見の成長について言及されがちな神木だが、声優デビューも比較的早かったことから、“声色”の変化にも注目されることが少なくない。まだ声も高く、舌ったらずで愛らしい坊やマルクルから、声変わりを経ながらもやや少年らしさが残る『サマーウォーズ』(2009)の健二。そして、『君の名は。』の滝役では、落ち着きを増した“イケボ”で女性ファンを大いに魅了した。アフレコでは地声で演技していたそうだが、年齢毎に変化や成長が見られ、観客に常に新鮮さや驚きを与えてくれていたように思う。

 また、神木といえば、漫画原作の実写作品にも定評がある。実写版は基本的に評価が割れがちであるが、『るろうに剣心』シリーズ(2014)、『バクマン。』(2015)、『3月のライオン』(2017)など、神木の出演した作品は軒並み評判がいい。特に、『3月のライオン』のキービジュアルが発表された際には、あまりの完成度の高さから、SNS上でも「(神木は)次元を超えた、2.2次元まで降りてきた」と絶賛されていた。

 色白で線が細く、中性的な神木の容姿は、まさに漫画に出てくる美少年そのもの。さらに、前述したように漫画やアニメといったサブカルチャーにも造詣が深いことから、“オタク女子”からの人気も目立つ。そうした点では、神木と親交が深く、『テニスの王子様』(2006)にも出演していた元祖2.5次元俳優・本郷奏多と通じる部分もあるだろう。本郷も声優経験があるほか、その端正なルックスとは裏腹に、引きこもりキャラでガンプラ愛好家という一面も持っている。彼らは共にルックスも演技力も抜群ではあるが、それにプラスして“オタク気質”であることで、コアなアニメファンからの支持も高いように感じられる。そうした層からの人気が厚いことも、声優活動において何かしらの支えになっているのではないだろうか。

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