『デスノートLNW』なぜ賛否両論に? 前作から10年、再映画化された意味を探る

 ここで連想するのが、原作、そして前作で描かれた、「新世界の神」を自称する殺人者キラと、それを支持する人々という構図だ。これが非常に怖ろしく感じるというのは、このポピュリズムと人権軽視政策が独裁国家を連想させると同時に、その先にあるものが、ある種のナチズムにつながるという予感があるからである。本作では、あるシーンで象徴主義の画家アルノルト・ベックリンの「死の島」という絵画が登場する。ベックリンは死神や死を題材とした作品を多く残しており、かつて画家を志したアドルフ・ヒトラーが熱心に収集していたことでも知られる。

 また劇中で、多くの登場人物たちがデスノートという強大な力を得ることで狂っていく姿が強調されているが、劇中で「国策」という言葉が登場するように、デスノートによって狂う対象は人間だけでないこともまた示されている。

 

 前作の時点では、デスノートという存在が、まだ政府や国家間でまともに信じられていなかった。しかし、10年経ち新生キラ事件が発生したことで、事態は様変わりし始める。死の状況まで操作することのできるデスノートは、計画的に使うことで、他の国にダメージを与え、国内の不都合な人物を消し、独裁的な政府を繁栄させることも可能なはずだ。そして、それを止めるために各国の軍隊や武装勢力が動きだすかもしれない。そうなれば新しい世界大戦の勃発である。

 現在、経済格差などを背景とした余裕のない好戦的なムードが、10年前よりも世界に蔓延してきていると感じる。『デスノート Light up the NEW world』は、その殺伐とした「新しい世界」の空気を、デスノートというアイテムを使って表現することに成功している。

 新しい作り手や俳優たちは、「デスノート」のこのような本質部分をしっかりと押さえている。その点だけでも、彼らは「デスノート」という作品に取り組む資格があると思える。そして本作を、紛れもなく現代の映画として甦らせていると感じるのである。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『デスノート Light up the NEW world』
10月29日(土)より丸の内ピカデリー・新宿ピカデリーほか全国拡大ロードショー
原作:大場つぐみ・小畑健(集英社ジャンプコミックス刊)
監督:佐藤信介
脚本:真野勝成
出演:東出昌大、池松壮亮、菅田将暉、川栄李奈、戸田恵梨香、中村獅童、船越英一郎ほか
主題歌:安室奈美恵「Dear Diary」
劇中歌:安室奈美恵「Fighter」
配給:ワーナー・ブラザース映画 
(c)大場つぐみ・小畑健/集英社 (c)2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS
公式サイト:www.deathnote2016.com

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