EXILE TRIBE『HiGH&LOW』のぶっとんだ世界 先鋭アクション × 荒唐無稽ドラマの凄み

 EXILE HIROが総合プロデュースする一大プロジェクト『HiGH&LOW』。その一つであるドラマ『HIGH&LOW THE STORY OF S.W.O.R.D』は、EXILE TRIBEの面々、窪田正孝ら若手俳優、小泉今日子ら実力派キャストの出演、そしてかつてないアクションと音楽の融合で話題となった。劇中ではSWORD地区と呼ばれるエリアで、山王連合会、RUDE BOYSといった5つのチームが覇権を争い、映画『TOKYO TRIBE』のような設定でドラマが繰り広げられる。Season1の好評を受け始まったSeason2もすでに5話を迎えた。ところで「アクションがヤバい」「カッコイイ」といったざっくりとした評価を受けがちな同作だが、よく見てみるとそれだけではないことがわかるはず。ここでは、同作を振り返りながら、アクションとドラマ、2つの視点でいかに突出した作品かを語りたい。

肉体表現の達人たちが生み出すアクション

『HiGH&LOW THE MOVIE』場面写真

 同作のアクション監督は『るろうに剣心』のアクションコーディネーター大内貴仁氏。大内氏は谷垣健治氏と同じく、若き日に香港に渡り世界最先端のアクションを経験してきた人物である。それだけに、劇中には「アクションシーンの見本市」とも言えるバリエーション豊かな殺陣やスタントが登場する。例えば、山王連合会が鬼邪高校に殴り込みをかけるエピソードでは、岩田剛典らが数十人の敵を倒しながら親玉の部屋を目指す集団戦闘を、約4分間の1カット長回しで見せる。RUDE BOYSが初登場する回では、パルクール世界大会でファイナリストとなったZENたちがアクロバティックに障害物を飛び越え戦うアクションを見せてくれる。さらには、小型カメラを通した一人称視点でパルクールアクションを見せる工夫まで。潤沢な予算と人員とアイデアを総動員したアクションが毎回繰り広げられるのである。

 また、各キャラクターが独自のスタイルで戦うのも印象的。岩田演じるプロレス好きキャラのコブラは、回転蹴りやトリッキーな関節技、ルチャ・リブレ(メキシコの覆面プロレス)系のアクロバティックで華麗な技を使いこなす。抜群の身体能力を誇る窪田演じるスモーキーは総合格闘技中心の万能スタイル。山田裕貴演じる鬼邪高校番長・村山は、根性で戦う我流格闘術だ。多くの場面で俳優たちは自らアクションをこなしているが、それも彼らがEXILE TRIBEのダンサーや舞台出身、あるいはナチュラルに身体能力に優れ、“肉体で表現する“スキルに圧倒的に長けているからこそできたこと。アクション作品を作るうえではこれ以上ない配役だろう。

荒唐無稽な世界を生真面目に演出

『HiGH&LOW THE MOVIE』場面写真

 同作はオリジナル原作の強みを活かし、コミックよりも奇抜で自由な世界観を構築しているのも特徴的だ。たとえば、村山率いる鬼邪高校は、漫画『魁!!男塾』に登場するような、強さがすべてのならずものの学校。村山は番長にあるため「100人の猛者に殴られる荒行を耐え抜いた男」なのである。他のチームも、「女を大切にするスカウト集団」White Rascals、「身寄りのない者たちが生きるために集まった」RUDE BOYS、「ヤクザの下部組織から生まれた」達磨一家など、あらゆるコミック・ドラマからサンプリングしたような、おいしいとこどりな設定に落とし込まれているのである。そして、それぞれのチームが独自の信念を持ち、あくまでも真剣に『ONE PIECE』的な“絆”のために戦う。

 こんな荒唐無稽な設定は堂々とやりきらねば、お寒いコメディになってしまうはず。しかし、本作はこの世界観に最適な監督たちの演出で上手くバランスをとっている。メイン監督の久保茂昭氏はPV監督出身でオシャレなイメージを持たれがちだが、実はしっとりとしたバラード曲「ふたつの唇」のPVでEXILEのメンバーをバイクに乗せて宙を舞わせたり、二丁マシンガンの銃撃戦を演じさせたツワモノである。ほかにも『珍遊記』の山口雄大氏、老婆軍団とクマが戦う『デンデラ』助監督の千村利光氏など、無茶なことを真剣に演出できる監督たちが招集された。彼らは劇中に単純な抗争だけでなく、オフビートな笑いをツッコんでみたり、潜入捜査モノのシリアス展開をぶち込んだりとやりたい放題だが、すべてを真剣にやりきっているのである。

関連記事