木村拓哉、森田剛、岡田准一……演出家・蜷川幸雄が磨き上げたジャニーズ俳優たち

 蜷川氏はいち早く森田の強みを見抜いていたのだろう。『血は立ったまま眠っている』では、葛藤や怒りを秘めた青年の良役を、『祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~』では熱量と悲しみ、狂気を併せ持つトビーアス役を演じさせている。そして森田の演技は、確立していったのだ。実際、5月28日に公開される映画『ヒメアノ~ル』では、連続殺人犯という心に闇を抱えた役を熱演し、「第18回ウディネ・ファーイースト映画祭」で正式上映されるという実績を残している。これを期に海外では森田の演技は高く評価され、俳優・森田剛として新たな第一歩を踏み出したのだ。

 他にも、V6の岡田准一、嵐の二宮和也・松本潤、KAT-TUNの亀梨和也なども、蜷川氏の手によって育てられたと言っても過言ではないだろう。蜷川氏はかつて「中途半端な仕事をしている役者より、トップを走り続けているアイドルと呼ばれる人のほうが、並々ならぬ努力をしている」と語り、“ジャニーズ=お飾り俳優”という世間の認識を打破した。ジャニーズメンバーたちが蜷川氏から影響を受けたのと同じように、ひたむきな姿勢のジャニーズメンバーたちが蜷川氏の心に影響を与えたのかもしれない。蜷川氏に演技を教わった面々が、その教えを大切にしつつさらに活躍をしていくことこそが、蜷川氏への本当の追悼になるのだろう。

(文=高橋梓)

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