SMAP・香取慎吾はリアルな独身男性をどう演じるか 俳優キャリアから『家族ノカタチ』を考察

 今回の『家族ノカタチ』で彼が演じるのは、実年齢とほぼ同じ39歳、独身の“結婚できない男”である。文具メーカーに勤めながら、こだわりに満ちたシングルライフを満喫しているサラリーマン。念願のタワーマンションの一室を手に入れた彼は、意気揚々と「理想のシングルライフ」をスタートさせるべく、新居に引っ越してくる。ところがそこに、久々に再会した父親が、連れ子と共に転がり込んできて……というのが初回のストーリーだ。かつて、阿部寛が好演して話題となった『結婚できない男』(2006年)を、どこか彷彿とさせるような人物設定。しかし、今回香取が演じる“結婚できない男”は、かつて阿部が演じたようなメリハリのついたコミカルな人物ではなく……むしろ、ふとまわりを見渡せば、ひとりやふたり、すぐに見つかるような、等身大のリアリティを醸し出しているのだった。

 現在の仕事に不満は無いものの、趣味の世界をはじめとするプライベートの時間を大事にし、他者との関わりも必要以上に持つことなく、ひとりの生活を楽しんでいるアラフォーの独身男性。それは、ある者にとっては、イマドキの独身男性ならではの「面倒臭さ」を体現したものと映るだろうし、またある者にとっては、「共感」の対象となるだろう。いずれにせよ、そこにはかつての香取ドラマには無かったような……特にエクストリームな「キャラクター」を演じる際には皆無だった、等身大の「リアリティ」が感じられるのだ。

 実際、香取自身も番組HPに、「この作品の主人公は“僕”そのもの。僕も(大介と)同じく、結婚できない男」と、コメントを寄せている。さらには、「今回の役作りに関して言うと、僕の周りにはいい資料がたくさんいます。中居正広しかり、草なぎ、稲垣……それぞれのタイプの結婚できない男たちをたくさん身近で見てきましたので(笑)、メンバーの皆のそれぞれの要素を役立てられたらと思います!」という意味深なコメントまで寄せている。「等身大」と言えば、かつては草なぎ剛が担当していたように思える役どころを、これまで「等身大」とは程遠い、エクストリームな「キャラクター」を多く演じてきた香取が、自身のプライベートを反映させながら演じることの珍しさと面白さ。それが本作『家族ノカタチ』の最大の見どころと言えるだろう。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「CUT」、「ROCKIN’ON JAPAN」誌の編集を経てフリーランス。映画、音楽、その他諸々について、あちらこちらに書いてます。

■ドラマ情報
『家族ノカタチ』
毎週日曜日 夜9時から放送中
出演者:香取慎吾、上野樹里、西田敏行、水原希子
脚本:後藤法子
監督:平野俊一、酒井聖博、松田礼人
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
公式サイト:http://goo.gl/AYBYWb

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