『マジック・マイク XXL』が提示する、これからの時代の“マッチョ”像

女性の心情が主体となるロード・ムーヴィー

 

 本作では、主人公マイクはストリップから足を洗い、数年来の夢であった、ハンドメイド家具製作の小さな工房を経営し、日夜、家具を作り、自ら運搬するなど、精力的に働いていた。しかし、前作で恋に落ちた相手、ブルックは彼の傍にいない。彼女はどうやらマイクと別れ、出て行ってしまったらしいのだ。映画の最初のカットでは、所在無げに海辺のブランコに座った、マイクの打ち沈んだ顔を映している。

 その後、久々に昔のストリッパー仲間に出会った彼は、マートルビーチのストリップ・ダンス・コンテストに参加するためサウスカロライナ州まで旅をするという彼らの計画に、衝動的に参加してしまう。未来の象徴だったブルックを失って、マイクの理想の生活はほとんど瓦解していたのだ。だが、出発しても未練たらしく携帯電話から従業員へ指示を送るマイクにイラついた、仲間の一人、通称「ビッグ・ディック(アレがデカい)」と呼ばれるリッチーは、彼の携帯電話を、走行中の車内から外に投げ捨ててしまう。「俺達の世界に、片足で入ってくるんじゃねえよ」という仲間達の本気の態度に、マイクの心は定まった。

 ダンス・コンテストでどうすれば勝てるのかを考え迷走しながら、目的地に向かう彼らは、天啓のように通過儀礼のような体験をしていく。それはさながら、『地獄の黙示録』のような象徴性を帯びている。コンビニで仏頂面をしながら働いている女性従業員を楽しませ笑顔にさせようと、リッチーがバックストリート・ボーイズの曲に合わせてコンビニのアイテムを利用しながら踊るシーンは大きな見どころだ。この場面によって、作品全体の方向性が決定付けられる。『マジック・マイク XXL』は、女性を喜ばせることが最大のテーマになっていくのだ。つまり、本作はストリッパー自身の心情よりも、女性側の心情が主体になっており、それに対し、彼ら男性側がどう対応するのかが問題になっているといえるだろう。

 マイク達は、より過激かつ繊細なサービスを提供する、男性ストリップの秘密クラブを運営する女性、ロームの館や、豪邸に住む年上の女性達のパーティーに参加することによって、「女性を喜ばせる」ヒントをつかんでいく。それは、男性が女性ストリッパーに求める直接的な刺激とは異なり、よりデリケートに、女性の尊厳を守り、男性上位社会が女性達に与えている屈辱に対し、ケアをするという役割を引き受ける必要があるということである。それは、ストリッパーと客という関係を超えた、現代の女性が男性に求める男女関係そのものであるともいえる。

マジック・マイク達が体現する新時代のマッチョとは

 

 従来、マッチョとは、「男が主体性を持って女を引っ張っていく」という保守的な男らしさの誇示を表す言葉である。しかし、そのような価値観が支配する社会においては、女性が男性に気に入られるような自分を作らなければならず、男性に承認されなければ幸せにはなれないというプレッシャーが、いつもつきまとうことになる。ここでの男性ストリッパー達は、金銭と引き換えに、そのような社会の男達による女性への振る舞いによって与えられた負担や心の傷に対し、部分的に責任を取っているということになるだろう。そして、それこそが「男性ストリップ」というシステムの隠された本質であるということを本作は鋭く描いており、また、女性の自主性を認め生き方をサポートするということが、新しい時代に求められるマッチョ像であるということを示しているように思えるのだ。

 マートルビーチでの彼らのパフォーマンスが感動的なのは、彼らの旅の全ての体験が、このショーで「女性を喜ばせる」一点に集約され結実したという達成を目の当たりにするからである。そして、そのことによって、マイク達ストリッパー自身も喜びを与えられるということも描かれているからであろう。ステージを終えた彼らの表情は晴れやかで、冒頭で活力を失っていたマイクも笑顔を取り戻している。ここで、花火が打ち上がり、アメリカ国旗が映されるアメリカ独立記念日の喧騒のイメージのなかにいる彼らの姿は、これからの男達は従来のマッチョから脱却し、女性の意志や心情を尊重することを学ばなければならないという、アメリカ社会の未来における、男性のひとつの理想像を提示している。

 前作のスティーヴン・ソダーバーグ監督の後を引き継いだのは、ソダーバーグ作品の多くの製作に関わってきたグレゴリー・ジェイコブズ監督である。ジェイコブズ監督にとって本作は、コンゲーム(騙し合い)を描いた、日本未公開の映画『クリミナル』、雪山でのオカルト恐怖映画『デス・ロード 染血』に続く三作目にあたるが、巨匠監督の後で、充実した内容でテーマを先に進ませ、より意義ある作品に仕上げたという点において、目覚しい成果をあげたといえるだろう。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

 

■公開情報
『マジック・マイクXXL』
出演:チャニング・テイタム、マット・ボマー、ジョー・マンガニエロ、エリザベス・バンクス、アンバー・ハード他
製作総指揮:スティーブン・ソダーバーグ
監督:グレゴリー・ジェイコブズ
配給:ワーナー・ブラザース映画
上映時間:115分/R15
(C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT,LLC
公式サイト:http://www.magicmikexxl.jp/

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