有村架純に続くブレイクなるか? 『忘れ雪』出演の"あまちゃん女優"大野いとの可能性

 放映から2年も経って、まだ『あまちゃん』の話をするのもどこか憚られるものがあるが、出演した若手役者が軒並みブレイクしていることを考えると、ひとつのジャンルとして成立してしまったことは否定できない。

 この「あまちゃん女優」というジャンルの中では、最近何かと話題の能年玲奈はもちろんのこと、橋本愛と有村架純が多く語られるが、2015年になると東京編で登場した女優が順々にブレイクし始めるのである。

 『問題のあるレストラン』(2015年)で好演を見せ、バラエティでもその存在感を発揮する松岡茉優、夏ドラマ『デスノート』のニア役でさらなる注目を期待される優希美青。

 そして、まだ今ひとつブレイクと呼べるほど弾け切れていないが、この先少なからず「あまちゃん女優」の一人として語られるであろう逸材がいる。それが大野いとだ。

 個人的には、ようやく注目されるようになったか、と少し親目線(年齢的には近所のお兄さんみたいな目線か)で見てしまうわけだが、そんな嬉しさも反面、ついに見つかってしまったか、という口惜しさも少なからずある。

 14歳のときにスカウトされ、『Seventeen』(集英社)のモデルとしてデビューした彼女は、翌年には人気漫画『高校デビュー』の映画版の主演に抜擢され、華々しくスクリーンデビューを果たす。と、理想的なシンデレラストーリーのように思わせておいて、その年に発表された「スポーツ報知蛇いちご賞」の〝最低〟新人賞を獲得してしまうのである。その理由は極めて明確である。彼女は、誰がどう見ても台詞読みが下手すぎたのだ。起伏のない、俗に言う「棒読み」というものである。

 それでも公開当時、女子中高生しかいない劇場でこの映画を観た筆者が驚愕したのは、ヒロインの棒読みでもなければ、上映中に劇場中から鳴り止まない携帯電話の着信音でもない。まったくの新人女優が、演技において最も難しいとされる喜劇を、しかもこんな軽調なスラップスティックコメディを全身で演じきっていたのだ。とにかく大げさな表情の作り込みと動作、「この映画は私のものだ!」と言わんばかりに放たれる勢いに、天才的なコメディエンヌの誕生を予感させられるものの、やはりどうしても彼女が喋ると少々我に還ってしまう。

 とはいえ、映画デビューから数年の間に7本の映画に出演と、コンスタントに続いていくのは、少なからず彼女の演技ポテンシャルが認められているからに違いない。だからと言って、一向に台詞回しは上手くはならないのだが、ここまで来るとさすがに観慣れてくるし、何より演じるキャラクターの幅広さがそれをカバーしているのだ。