【試し読み】いじめを注意したら次は自分……? アニメ映画原作『縁の手紙』が描く少年少女の痛みと再生

絶賛上映中の韓国発のアニメーション映画『縁の手紙』(2025)。HKT48とIZ*ONEという2つのアイドルグループのメンバーとして活躍し、現在は俳優としてキャリアを重ねる矢吹奈子の声優初挑戦作としても注目を集める本作は、チョ・ヒョナのウェブトゥーン『縁の手紙』(LINEマンガ)を原作としている。
ウェブトゥーンは長期連載の作品が多いイメージだが、本作は本編全10話と読みやすい長さで構成されている。今回は、映画を観る前・観た後に読みたい原作『縁の手紙』の魅力を紹介したい。
いじめにNOを突きつけたソリの痛みと再生を描く
主人公の少女、イ・ソリは私立に通う中学生。ある日、彼女はいじめられている友達を見過ごせず「やめなよ」と声を上げたことで、次の標的となってしまう。幼い頃に住んでいた田舎の学校に転校したものの、いじめの標的となったトラウマからソリは周囲に馴染めない。そんな自分が情けなくて涙を流したとき、ソリは机の中に一通の手紙を見つける。
手紙には、学校の見取り図やクラスメイトの顔と名前、先生についての豆知識が綴られていた。「2番目の手紙を探してみて」という言葉に導かれるように手紙の続きを探して学校を探検するソリは、屋上でパク・ドンスンと出会う……。
「縁の手紙」は、どこか懐かしい温度と手触りをした物語だ。日常に接しながらも特別すぎない少し不思議な要素も取り入れつつ、三人の中学生たちの痛みと再生を描いている。
初めて読むはずなのに、どこか知っている気がする。読みながら、そんな感覚を覚える人も多いかもしれない。大人の読者にとっては、いつかに置いてきた痛みや淡い思い出を記憶の中から拾い上げていくような物語だろう。今まさに学生生活を送っている人にとってはもっと近い、これから親しくなる友人のような物語だと思う。
「正しいこと」をしたはずなのに傷ついたソリは、手紙に書かれていた情報をもとに、緩やかに周囲と関わり始める。なかなか言葉を返せないでいたクラスメイト、魔女と呼ばれる学校の用務員スニさん。そして、手紙の差出人を知っているドンスン。
手紙の差出人はドンスンの友人であるチョン・ホヨンという名の少年で、夏休みの間に転校するまではソリの机を使っていたというのだ。
ソリとともに手紙を探すドンスンもまた、痛みを知っている少年だ。ドンスンは同級生との間に起こったトラブルがきっかけで、ホヨンと親しくなる。ドンスンは、つらいときに寄り添ってくれたホヨンが自分に何も言わないまま転校していったことに、ひっそりと傷ついていたのだ。
ソリとドンスンの痛みを、青春や思春期にありがちなものだと纏めることはしたくない。人の痛みはさまざまで、他者が本当に理解することは難しいからだ。過ぎ去った時間に生きていた幼い私が、「大人に分かったような言葉で括られること」が腹立たしくてならない子どもだったせいでもある。
そんなふうに、「縁の手紙」は、物語を通して読者の中にある記憶を柔らかに掬い取る。ソリとドンスンとまったく同じ経験をしていなかったとしても、近しい痛みの欠片を知っているはずだ。手紙を探すソリとドンスンの物語を追いながら、読者は過去に置いてきた思い出を拾い集めているかのような感覚を覚える。その柔らかさが心地良くもある、不思議な物語だ。
手紙が導いた先にある景色までたどり着いてほしい物語
物語を読み進めるにつれて、ぽつりと滲むのは「どうしてホヨンは手紙を残したのか?」という疑問だ。ドンスンの記憶の中で、ホヨンはどこか達観したように穏やかだ。だが終盤、手紙を通してソリとドンスンを導くホヨンもまた、思い悩む一人の少年であることが分かってくる。
ソリとドンスンが、手紙を探してたどり着いた物語の結末について深くは触れないが、最後まで読むとこのマンガが優しいまでの丁寧さで作られたことがわかる。特に、折に触れて挿入される机の描写が秀逸だ。同じ席に座るソリとホヨンの関わりを印象的に表したコマにも注目してほしい。
また、これから読むなら、キャラクター名が映画と同じ韓国名で、あとがきと番外編を収録したリマスター版がおすすめだ。物語のその後を描いた番外編は、再び巡ってきた夏が舞台。本編を最後まで読んだ人のためのご褒美であり、物語全体を締めくくるに相応しい満足感の高い一編だ。
毎日一話ずつ読み進めるのも味わい深いが、個人的には、ゆっくりと噛みしめながらひと息に読みたい物語だった。映画の前に予習をかねて読むのもよし、映画の後に違いを楽しみながら読むもよし。どこか懐かしくて慕わしい物語を、ぜひとも味わってみてほしい。
■作品情報
『縁の手紙【リマスター版】』
作者:HYEONA CHO
配信:LINEマンガ
URL:https://manga.line.me/product/periodic?id=Z0004335
©HYEONA CHO/LINE Digital Frontier
■映画情報
『縁の手紙』
公開日:2026年9月25日
公開劇場:新宿バルト9ほか全国ロードショー
監督:キム・ヨンファン
原作:チョ・ヒョナ『縁の手紙』(LINEマンガ)
声の出演:矢吹奈子、小野賢章
制作:STUDIO LICO、STUDIO N
配給:コミックス・ウェーブ・フィルム
配給協力:KeyHolder Pictures
協力:CWF CINEMAS
上映時間:97分
公式サイト:https://en-no-tegami.com





















