【漫画】独身・夢なしアラサー男性が同居した相手とは……? 黒江S介『悪魔と俺と』がSNSでバズるワケ

日本の漫画史において“悪魔”は描かれ続けてきた属性のひとつだ。『悪魔くん』『デビルマン』(共に講談社※)『D.Gray-man』『青の祓魔師』そして『チェンソーマン』(いずれも集英社)。そういえば『ONE PIECE』(集英社)でルフィが食べたのも“悪魔の実”だ。ヴィランとして、あるいはヒール、ダークヒーローとして。日本の漫画史の中で常に“悪魔”は文字通り邪悪な魔物として描かれてきた。
※=『デビルマン』は、現在復刻版が小学館クリエイティブより刊行されている。
黒江S介の最新作『悪魔と俺と』(双葉社)でも悪魔はメインキャラクターとして描かれる。が、本作で描かれる“悪魔”はヒールでもダークヒーローでもない。“俺”こと大ちゃんと共に素朴な日常を生きる、あたたかくて優しい悪魔だ。そんな悪魔と大ちゃんが織りなす飾り気の無い日々の営みを描いたのが『悪魔と俺と』である。
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本作における悪魔、最大の魅力はそのメロさにある。黒髪ワンレンロングで色白、ぱっちりとした目、長いまつ毛の美形男子(?)。高身長のスラリとした体つきでサッパリとした性格の持ち主。おせちやお弁当を手作りしたりシマアジを捌いたりと料理上手な一面や、ゴミの分別に厳しい一面、さらには大ちゃんが職場の後輩を連れて来たらはしゃいだり。そのルックスとは裏腹に、実家のお母さんのような安心感が節々から溢れ出ている。ワードやエクセルは使えないけど色彩検定の資格は持っていたり、悪魔なのに節分を楽しんだり、スケートは下手くそであったり、実の母親との電話を恥ずかしがったり。頭からツノが生えているところ以外はとても人間らしさに溢れる悪魔は、我々がイメージする“悪魔”とは正反対のキャラクター。こんな悪魔とだったら一緒に生活してみたいと思わせてくれる。
一方本作のもうひとりの主役である“俺”こと大ちゃんは坊主頭でちょっと強面な28歳。独身で夢も目標も無く、雑貨屋で一緒に働いている気になるあの子は彼氏持ち。自分の意見を他人に伝えることが苦手で、学生時代にちょっとしたトラウマを持ち、パッとしない人生を過ごすフツーの青年だ。そんな大ちゃんが唯一、人と少し違うのが悪魔と共に生活しているところ。
大ちゃんの生活が悪魔との共同生活によって少しずつ上向きになる。この『悪魔と俺と』は悪魔との生活を介した大ちゃんのささやかな成長譚でもあるのだ。
象徴的なのは大ちゃんの同窓会にまつわるエピソード(単行本1巻収録)だ。高校の同窓会の招待が届いた大ちゃんだが、その表情は浮かない。その強面気味な顔を理由に、当時上級生から目をつけられ、同級生には避けられてしまった大ちゃんは高校時代にあまり良い思い出が無いのだとぽつりぽつりと悪魔に打ち明ける。悪魔は行きたくないなら行かなくても良いと寄り添うが、大ちゃんは思案の末に同窓会行きを決意。
着ていくスーツを悪魔と選び、いよいよ迎えた当日。緊張の面持ちで訪れた同窓会の会場には、当時の大ちゃんのことを覚えていた旧友・川上くんが。現在の身の上話を契機に当時大ちゃんが描いた絵のことを印象深そうに話し、大ちゃんの絵を称賛する川上くん。大ちゃんはどこか気恥ずかしそうに、でも嬉しそうに頬を赤らめたのだった。本エピソードがXの『悪魔と俺と』公式アカウント(@akumato_oreto)で公開されたところ、4,000件近くのいいねやコメントなどの反響が寄せられた。この数字はきっと大ちゃんと同じような思いを抱えたユーザーたちの共感の証ではないだろうか。
他にも年始に1年の抱負を聞かれ「変われる気がしないから現状維持」とどこか険しい表情で応えた大ちゃんに対し悪魔が13,572歳まで引きこもりニートだった自分よりマシだと伝えたり、自分の意見を上手く表せない大ちゃんに対しまっすぐな瞳で意見をちゃんと言おうと伝えたり。悪魔は常に押し付けがましいことなく、大ちゃんの選択を自然体で肯定している。その“悪魔”らしからぬ真っ直ぐな姿、そしてその真っ直ぐさを契機に少しずつ変化する大ちゃんの姿に、読者である我々は共感し、またキュンとしてしまうのだ。
■書誌情報
『悪魔と俺と』1
著者:黒江S介
価格:814円(税込)
発売日:2026年10月8日
出版社:双葉社
























