【漫画】大学の先輩が撮った自主制作の映画は「黒歴史」なのか? 創作への熱意が刺さる『大学の先輩』

 作品を「黒歴史」なんて言わないで―—。大学時代の無垢な創作への情熱と青春を、ほぼ実話で描いた漫画『大学の先輩』がXに投稿されている。

 この作品を手がけたのは、西村マリコさん(@westvillage29)。作中で唯一のフィクションである「先輩の死」には、結婚を機に知らない土地へ移り住んだ作者自身の実感が重ねられているようだ。そんな彼女に本作の制作背景や、実在する「先輩」への思いについて聞いた。(小池直也)

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『大学の先輩』(西村マリコ)

――X投稿後の反響はいかがですか。

西村マリコ(以下、西村):想定していた以上の「いいね」をいただきました。コメントや引用の数が普段よりも多く、「自分もそうだった」と共感してくれる人が多かった印象です。

――本作の着想について教えてください。

西村:最後に先輩が亡くなるところ以外は、ほぼ実話ですね。特に許可も取らずに亡くならせてしまいましたが……(笑)。登場人物も出来事もほとんどそのままで、思い出を詰め込んだような漫画になりました。

 大学時代は「人生の夏休み」なんて言われますけど、色々なことができた時間でしたし、みんな一生懸命でしたね。3年ほど前に結婚して知らない土地に来たからか、大学時代のあの熱量が急に恋しくなってしまったんですよ。学生の頃を懐かしむ気持ちが、こういう形になったのかなと思います。

――制作期間はどれくらいでしたか。

西村:夫と「コミティア」に出そうという話になり、1カ月ほどで描きました。もともと大学時代に描いていた漫画日記のラフをつなげて構成しています。作画的には自分としては少し雑めな仕上がりかもしれません。

――ご自身のなかで印象に残っている場面は?

西村:主人公が編集者にダメ出しされて、先輩に励まされる場面ですね。実はあの映画を一緒に見に行ったのも実話で。別に先輩は他人のことを考えて動いているわけではなく、自分が好きなように行動しているだけじゃないですか。でも、それが人を引っ張る力になっている。当時もそんな魅力がある人でした。

 先輩は現在、芸術関係の仕事をされています。趣味で漫画や映像の同人活動もしていて、そちらも結構売れているみたいですね。映像の仕事もやりたいそうなのですが、なかなか難しいところもあるようです。

――終盤、作品を黒歴史にしようとする先輩に抗議するシーンも印象的でした。

西村:あれは私ではなく、知人の発言なんです。色々な人が関わっているのに「黒歴史だ」と、先輩が言ってしまう出来事が実際にあって。それを友人が「たくさんの人が関わっているから、そんなことは言わないで」と言ったそうなんですよ。当時から漫画を描いていた身として、あの言葉に感化された思い出があります。

――人の心の機微を描いた作品ですが、そういったことは普段から意識されているのでしょうか?

西村:そうですね。大人になると子どもの頃に比べて心が動きにくくなる気がしていて、それを残念に思ってます。だから、嬉しかったことや悲しかったことをスマホにメモするようにしていますね。感情って記録しないと消えてしまうものですから。結果的にそのメモが人間の機微を気にして記録している、ということなのかもしれません。

――ほかに苦労した点などはあれば知りたいです。

西村:同人誌なので起承転結をきっちり意識する必要はなかったのですが、先輩の出来事を並べているだけなので「ちゃんと伝わるかな?」「面白いと思ってもらえるかな?」というのは不安はありました。

 実際「コミティア」の出張編集部でも「主人公が何もしていない」と言われましたね(笑)。でも私は先輩の物語を描きたかったので、それはそれで仕方ないなと。

――現在は京都で活動されているそうですね。今後の展望を教えてください。

西村:青年誌での連載に向けて準備をしています。秋ごろに開始できる予定で、今はネームを描いている段階ですね。元気な漫画というよりは、しみじみと人生や、人間に生まれた幸せみたいなものを包み込んで描けたらと。

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