【漫画】もしも推しと牛丼屋で遭遇したら? アイドルとオタクの交流劇『世界で一番しあわせ!』
憧れの推しが、牛丼屋にいた――。元ひきこもりのオタク・佐野仰太朗と、彼を外の世界に連れ出してくれたマイナーアイドル・宮本恵の関係を描いた『世界で一番しあわせ!』の冒頭がXに投稿されている。
「マンガMee」で連載され「推し活」という言葉からこぼれ落ちる感情を描く本作について、原作担当の春芳きざしさん(@kizashi_hrys)に話を聞いた。(小池直也)
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――Xに投稿された反響や手応えはいかがでしょう?
春芳:たくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。SNSで拡散していただくには、やはり画のインパクトが重要ですから。作画担当のアルコ先生のおかげだと感じています。
――アンチの引きこもりからファンになった男性を主人公にした経緯を聞かせてください。
春芳:「アイドルがファンを好きになるとしたら、どんな人なんだろう?」と考えたことが、佐野というキャラクターが生まれたきっかけです。主人公を男性にしたことに明確な理由があったわけではなく、物語やキャラクターを考えていくなかで自然と定まっていきました。
一般的な恋愛であれば、容姿が優れていたり、経済力があることが魅力になると思います。でも、アイドルは綺麗な人を見慣れているでしょうし、自分自身で稼ぐ力もあるじゃないですか。そう考えると、そうした要素は決定的なものになりにくい。
――では、何が決定的になるのでしょう?
春芳:やはりファンに応援されることや、喜んでもらえること、誰かにいい影響を与えられたと実感できる瞬間なのではないかと。だからこそ、まっすぐに好意や感謝を伝えてくれる佐野のような人間は、アイドルにとって魅力的に映るんじゃないかなと思いました。
――ご自身にも推しのアイドルがいたりしますか。
春芳:「ハロー!プロジェクト」が好きで、一時期はライブやイベントにもよく足を運んでいました。歌って踊るアイドルを見るのはもちろん大好きなのですが、会場でファンの方たちが一生懸命コールをしたり、振りコピをしたりして楽しんでいる、その空間そのものが好きで。ライブ会場の空気感や、ファンの熱量みたいなものは、作品にも自然と反映されているかもしれません。
――恵くんのピュアなキャラクターも魅力的です。彼はどんなイメージで考えたのでしょう。
春芳:「こんなアイドルがいたらいいな」という思いから生まれたキャラクターです。アイドルという職業を選ぶ人は、自分の人格や人柄そのものが仕事の一部になるので、ある種の覚悟を持っていると思うんですよ。どこか達観した部分もあるんじゃないかと。
そういったイメージが、恵に反映されているかもしれません。特定のモデルはいませんが、作品のコメント欄で「○○くんに似てる!」という声を見かけることがあります。そういうコメントを見るたびに、「世の中にはこんなに素敵で可愛いアイドルがたくさんいるんだな」と嬉しい気持ちになります。
――牛丼屋がキースポットとして出てくるのも気になりました。
春芳:これまで佐野は、アイドルのライブやイベントといった「ハレ」の場へ足を運ぶ側でした。そこから、アイドルを引退した恵が佐野の日常へと入り込んでいきます。その変化を象徴する場所として、牛丼屋のような何気ない日常の空間を選びました。
――作画のアルコさんとの連携についても聞かせてください。
春芳:基本的には、担当編集さんを通してやりとりをしています。いち読者として以前からアルコ先生の作品を拝読していたので、今回ご一緒できて光栄です。毎回、仕上がった原稿を拝見するたびに感動しています。
極端な言い方をすると、読者の方の99%くらいはアルコ先生をきっかけに作品を手に取ってくださって、その素晴らしい作画のおかげで読み続けてくださっているんじゃないかと思いますよ。作画や演出が作品に与える影響の大きさを、あらためて実感しました。
――春芳さんは「推し活」をどのような概念だと考えていますか。
春芳:よくも悪くも商業的にパッケージングされた、わかりやすい概念だと思っています。ただ、そう括ってしまうことで、人々の細かな感情や想いがこぼれてしまう部分もあるのではないかと感じていて。本作では、そうした言葉だけでは表しきれない感情を、丁寧に拾いながら描いていけたらと思っています。
――今後、本作をどのように描いていきますか。
春芳:これからも、読者の方に楽しんでいただけることを第一に描いていきたいと思います。楽しんでいただけるよう頑張りますので、引き続き『世界で一番しあわせ!』をよろしくお願いいたします。