子どもの「ひみつ基地」「ボール拾い」も犯罪? 大人も勉強になる『それ犯罪かもしれない図鑑』
5月21日のAmazon売れ筋ランキング「本」部門で35位に食い込んでいたのが、『ハンディ版 それ犯罪かもしれない図鑑』(金の星社)である。累計12万部突破というベストセラーが、根強い人気を見せている。
子どもの「ついやっちゃう行動」が実はNG? 大人も学べる法律図鑑
『それ犯罪かもしれない図鑑』は、子ども向け書籍専門の出版社である金の星社が手がけた書籍だ。「ハンディ版」とタイトルに入っているところからわかるように、2024年に最初に出版された最初のバージョンは大判で、文字通りの「図鑑」だった。これの判型を縮めて2025年9月に出版されたところ大ヒットし、2026年5月には11刷と重版を重ねている。よく売れているのだ。
タイトルの通り、本書の内容は「子どもが日常的に遭遇するようなちょっとしたイタズラや軽い気持ちでやってしまいそうなこと、巻き込まれがちなトラブルが、実は法律に違反しているかも……」という事例を紹介したものだ。目次に載っているトピックを挙げても、「この空き家、ひみつ基地にしよう!」とか「図書館の本、返し忘れてた!」とか「青信号が点滅し始めた……ダッシュ!」とか、子どもが遭遇しそうな事例がズラリ。「文化財に落書き」「紙幣をコピー」のような誰がどう考えても犯罪に該当しそうな事例から、「友達から口外しないよう言われたことを他人に話してしまったら?」「自分が処方された薬を自分以外の人間に飲ませたら?」といった大人でも即答が難しそうな事例まで、数多くの「それ、犯罪かも?」「法律に違反してるかも?」というケースが収録されている。
秀逸なのは解説ページで、まず「〇〇罪に該当する」という結論を説明した上で、いったいその行動の何が法律に触れるのかを説明。例えば「キャッチボールをしていたらよその家にボールが入ったので、無断で拾いに行く」という事例では「他人の家に許可なく入ると住居侵入罪になる」という結論を示した上で、「だれでも、嫌な人が家に入るのを断る権利を持っています」とその法律が存在する根拠を説明。さらに子ども向けに「私有地」の概念まで説明した上で、そこに黙って入ることは法律上アウトであると結論される。
解説ページは基本的に全てこのような構成で、とにかく頭ごなしに「法律があるからダメ」という書き方にはなっていない。事例のような行動によってどのような損害や迷惑が発生する可能性があるかを説明し、それを防止するために法律があることがスッと頭に入ってくる作りだ。児童書ではあるが、大人が読んでもけっこう勉強になる。さすが本職の弁護士が監修しているだけはある。
「法律違反じゃないならOK」ではない、マナーの大切さも説く一冊
さらに興味深いのは、「このケースは法律違反にはならない」という場合、ちゃんとそのように書かれている点だ。本書の例で言えば、同じ「行列への割り込み」にしても、乱暴な言葉や行動によって周囲の人を威圧して割り込めば「行列割り込み等の罪」に問われるが、乱暴な言動がなく静かに割り込めば法律上は罪に問われないのである。
こういった法律の穴をつくような事実にしても、「しかし実際にやればマナー違反であり、人にされて嫌なことは自分でもやらないようにしよう」と釘が刺されている。「ルールの裏をかいて"ハック"する」のが良しとされる現代において、こういった釘が刺されていることは大事なことだと思う。
「これはどう考えてもダメだろう」という事例から、「そんな法律があるのか〜」と感心する事例、そして「これって法律には違反してないの!?」「これはダメなの!?」という驚きの事例まで、子どものやりそうなイタズラ・トラブルと法律の組み合わせは、思った以上に奥が深い。ページを捲るごとにいちいち「へえ〜」と言ってしまうこと請け合いである。コラムでは「そもそも六法とは」というところから解説してくれるので法律の知識もつくし、確かにこれはベストセラーになるのも納得。今なら本屋さんでもかなり目立つところに置いてあるはずの本なので、一度手に取ってみていただきたい。
■書誌情報
『ハンディ版 それ犯罪かもしれない図鑑』
著者:小島洋祐(監修)、小豆だるま(イラスト)
価格:1,540円
発売日:2025年9月16日
出版社:金の星社