FANTASTICS・堀夏喜が語る、表現者としての“引き算の美学”「押してダメなら引いてみる」
写真集の刊行は、堀夏喜が長年“叶えたい”と切望し続けていた夢で、同作は、ロケ地、スタイリング、デザインまで、本人のこだわりが遺憾なく発揮された仕上がりとなった。
一冊のアートブックとしても楽しめる本作の制作秘話と、5月からスタートするFANTASTICSのアリーナツアー「FANTASTICS LIVE TOUR 2026 "SUNFLOWER"」への意気込みを語ってもらった。
気づけばメイクをしていなかった
ーー写真集発売を切望していたそうですが、写真集というものに対してどのような思いがあったのでしょうか?
堀夏喜(以下、堀):写真集は自分を表現できるものだと思っていて、「自分が作るなら」というイメージを長い間していました。
ーーそのときのイメージは、今回どれくらい形になりましたか?
堀:120ですね。
ーーおお! どういったものをイメージをしていたのでしょうか?
堀:僕、海外の写真家やカメラマンのアートブックやフォトブックが好きで、結構家にあるんですね。だから、そういうものに近いものが作れたら自分のバックボーンや自分らしさが出せるのかなと考えていました。あとは自分もフィルムカメラで写真を撮るので、それも載せたいなとか。おおまかなイメージは持っていたのですが、実際に作ってみると予想以上に良いものができて、120点になりました(笑)。
ーー写真のセレクトだけでなくレイアウトも素敵ですが、そのあたりは?
堀:編集の方がまるで天才的な料理人のように僕の好きなものや好みを汲んで、カメラマンやデザイナーさんなど、僕が表現したいものに導いてくれる制作チームを固めてくれました。その人選が本当に素晴らしくて。
ーー堀さんのイメージを形にしてくれるチームだったんですね。
堀:そうですね。
ーーお顔の写っていない写真も多いですよね。足元の写真から始まっていたり。そのあたりにも意図を感じました。
堀:今回、ものとしてカッコいい写真集を作りたかったんです。全体として世界観が統一されていれば、別に僕が写っていてもいなくてもいいと思っていました。今回はノーメイクなんですが、それも、“カッコいい”って、見た目のカッコよさのことだけじゃないよなと思ったからで、僕の観点での“カッコいい”を提示できたらいいなと思っていました。
ーー今、お話にもありましたが、今回は男性スタッフたちと共同生活をして、全編ノーメイクで撮影に挑んだということですが、このコンセプトはどのような思いからだったのでしょうか?
堀:最初から「メイクしません!」と言ったわけじゃなくて。自分が作りたいものを話しているなかで、今回ヘアを担当してくれたTsubasa Dickyくんと、「じゃあメイクする必要ないかもね」という話になって。気づけばメイクをしていなかったので、結果的に「全編ノーメイク」と言える作品になりました。やりたかったことに対してメイクが必要じゃなかった、ということなんだと思います。共同生活にしても、僕が「キメの撮影というよりは、生活の切り取りみたいな感じにしたい」と話したことから、「本当に寝起きの写真を撮るかもしれないし、帰ってきてちょっとラフなところを撮るかもしれない。じゃあ実際にみんなで暮らせばそういう写真が撮れるよね」という流れで決まったところがあります。
ーーなるほど。海外での写真集の撮影だと、ホテルの個室を押さえて、みたいな感じが通常だと思うんですが、ホテルの個室は本当に取らず?
堀:はい。アパルトマンの大きなところに泊まりました。
ーー楽しそうですね。
堀:すごく楽しかったです。着いてまず鍵が開かないとか、「今日あそこお湯が出ない」とか。撮影を終えて帰ってきて、みんなでリビングで集まろうと話していたのに、1人だけリビングに来なくて部屋を見に行ったら部屋で疲れてダウンしちゃってたり。そういうことが全部面白くて楽しかったです。
ーーちなみに今回一緒に生活したスタッフ陣はもともと知っていた気の知れた方々ですか?
堀:もともと知っていたのは、ヘアメイクのTsubasaくんだけですね。カメラマンさん、スタイリストさんは今回の写真集で初めましてで。撮影前にみんなで一度食事に行きましたけど、次に会ったのがこの写真集の撮影という。
ーーそうだったんですね。では、撮影を通してずいぶん仲良くなったのでは?
堀:はい、仲良くなりました。皆さんといるのが心地よくて。共同生活においてストレスがまったくなかったです。
嘘がないものを作りたかった
ーー写真集には、生活のほかにパリの街並みでの写真も収められていますが、ふらっと街を歩いているようなカットが多いですよね。撮影はお散歩しているような感じで?
堀:そうですね。「そのへんをふらっと歩いてみようか」とかそういう感じでした。ただ景色を見て「めっちゃきれいだな」と思っているだけの顔をしている写真も多いし、川沿いの写真も「俺、セーヌ川のほとりに座ってるな」って思っていただけで。撮られているという感覚がない写真が多いです。
ーー先ほど、見た目のカッコよさだけが“カッコいい”ではないということもおっしゃっていましたが、本書ではどういう堀さんを見せたいと思っていましたか?
堀:本当の自分ですね。「本当の自分ってこういう人なんだよ」というのを見せたかった。FANTASTICSにいると、どうしても表に出るとき=ちゃんと作られている自分でなきゃいけない。でも、「そうじゃない自分も本当はいるのに」とずっと思っていて。だから、それを個人の写真集という機会で見せられたらいいなと思っていました。
ーーだから、ぼーっと川を見ているだけの表情や、撮られているという感覚のないものもオッケーだったんですね。
堀:そうですね。というか、僕が作りたいものにはそれが必要だと思ったんです。結局、「狙って撮られようとしている」とかって、写真でわかっちゃうと思うんですよ。そうではないものを作りたかった。
ーー本当の自分を見せたいと思って作り始めたとのいうことですが、「LIVING FOR」を作り上げてみて、ご自身の中で堀夏喜という人はどういう人物だなと思いましたか?
堀:意外といろいろな顔をするんだなと思いました。こうやって見てみると意外と表情豊かで。(ゲラを見ながら)いやぁ、いい顔してるな~。撮影しているとき、編集さんに「日を追うごとにいい顔をするようになってきたね」って言われたんですよ。確かに言われてみると、いろんな表情をするようになっているなと思いました。
ーー私も拝見させていただきましたが、実際の撮影順はわからないですが、ページの後半に行くほど柔らかい表情のものが増えているなという印象を受けました。
堀:撮影順でいうと、掲載順とほぼ同じですね。
ーーじゃあ本当にどんどん柔らかくなっていったんですね。
堀:そうだと思います。
ーー本書の衣装やスタイリングでこだわったことがあれば教えてください。
堀:服は私服もあって。着いたときのスウェットは完全に私服ですね。あとは靴も私物です。これは男子っぽいこだわりだと思いますが、フランスにいるということで、J.M.WESTONを履きたいなと思って。
ーーJ.M.WESTONはもともとお持ちだったんですか?
堀:もともと持っていたものと、あとは向こうで2足買いました。
ーー買い足したんですね!
堀:はい。それでいうと、フランスにいるからカルティエを付けたり、エルメスを付けたりもしています。
ーーシチュエーションで言うと、映画館のカットも素敵ですね。
堀:あの映画館はパリで1番古い映画館だそうです。真っ赤なシートなんですが、よく見ると刺繍で名前が書いてあったり、いろんな席があって面白かったです。
ーーそのほかに印象的な場所やシーンがあれば教えてください。
堀:どの写真についても長々と話せますが(笑)、Ofr.という本屋さんは僕が絶対に行きたいと行った場所の一つなので、行けて最高でした。
ーー行きたかったのはどうしてですか?
堀:アートブックが好きなので、よくいろんな本屋さんを調べるんですね。それで、パリにOfrという本屋さんがあるというのは知っていたんです。気になる海外の本もあるし、アパレルなどの小物もかわいいから欲しいなと思っていて。この本屋さんのカットでかぶっている帽子は、ここで買ったものですね。
ーー最後にはご自身のフィルムカメラで撮影されたパリでの写真も掲載されています。ご自身で撮影した写真については、どのような気持ちやテーマで撮影をされたのでしょうか?
堀:滞在中はずっとフィルムカメラを持って撮っていて、「気になったら撮る」という感じでシャッターを切るようにしていました。だからテーマとかはなくて。その場にいた子供や、おいしかったご飯など、何でも撮っていました。フィルムなので、その場ではどんな写真が撮れているかわからなかったんですが、現像したら上がりがすごく良かったので、街がおしゃれなんだなと思いました。こんなにいい写真が撮れているとは思わなかったです。
ーー堀さんの撮影した写真のセレクトやレイアウトには、堀さんのアイデアはどのように入っているんですか?
堀:デザイナーさんに丸投げしました。デザイナーさんが気に入った写真を入れてくださって。それがすごくうれしかったですね。
自分の血が通った一冊になった
ーーパリを撮影地に選んだのは、お母様が「パリで暮らしてみたい」とおっしゃっていたからだそうですね。
堀:親が「行ってみたい」と言っていたのも理由の一つではあるんですが、今回パリにした理由はそこが大きかったわけではなくて。僕自身、フランスの文化から影響を受けた部分が多かったんです。音楽やダンスはアメリカからの影響ですが、ファッションや映画、公園で本を読むみたいな生活はフランスからの影響が大きい。アメリカは行ったことがあるから、だったらパリに行ってみたいなと思ってパリを選びました。
ーーそうだったんですね。ちなみにお母様は何とおっしゃっていました?
堀:めちゃくちゃうらやましがっていました。「いつか行ってみたい!」って。
ーーでは、いつかお母様とフランス旅行に。
堀:行けたらいいですね。
ーー念願のパリに行ってみて、いかがでしたか?
堀:もちろん感動はしたんですが、同時に落ち着く場所でもあるなと思いました。行く前は、ちょっと敷居高く感じていたところもあったんです。だけど実際に行ってみると、確かに建物も歩いている人もおしゃれだし、ご飯もおいしいけど、いい意味で普通の街で、居心地が良かったです。
ーー本書のタイトルは「LIVING FOR」。このタイトルに込めた思いを教えてください。
堀:「住んでいるように」(LIVING)というテーマがあったので、そこを表現したかったというのが一つ。それと、タイトルは日本に帰ってから考えたんですが、帰ってきて「こうやって、自分の想像したものを形にしたり表現したりすることは、自分の生きがいだな」と思ったんです。それでどちらの意味も込めるには「LIVING FOR」という言葉がぴったりかなと思って、このタイトルにしました。
ーー撮る・撮られるどちらも経験した本書ですが、ご自身では周りから見られている姿と、ご自身で思うご自身に違いは感じますか?
堀:違いは感じています。求められることがたくさんあるのが僕の仕事。でもそこに応えてばかりだと、本当の自分とは違っていくということを、活動していく中で感じて。だから、今回は良い機会だと思ってありのままの自分でパリに行きました。ちょっとカッコつけているものもありますけど(笑)。
ーーそもそもパリで撮影したいというのも堀さんのアイデアだったわけですしね。
堀:はい。だから本当に、自分の血が通った一冊になったなと思います。自分のやりたいことと、本当の自分が混ざった、自分の血が通った一冊です。
ーー写真集ではさまざまな日常の場面が切り取られています。堀さんが日常生活の中で、一番好きな時間はいつ、何をしている時間ですか?
堀:ライブをしているときです。2時間踊り続けるってキツイし、大変なこともあるんですけど、あれだけの感情を爆発させることも、あれだけ多くの人から歓声を受けることも、日常生活では他にないので。たぶん何らかのホルモンが出ているとは思うんですが。あの時間が1番好きですね。これがなくなったらと思うと恐ろしいです。
ーーてっきり「寝る時間」とか「ご飯を食べているとき」とか、そういうものが返ってくるのかと思っていたのですが、やはりステージに立つ時間が1番好きな時間なんですね。確かにライブの時間は何にも変え難い時間ですもんね。
堀:でもご飯も好きですよ。それこそライブ終わったあとにみんなでご飯を食べる時間も好きです。
ーーきっと、ライブがうまくいったあとのご飯はいつもに増しておいしいでしょうしね。
堀:ライブ後のご飯は焼肉ばっかりなんですけど、何回行っても「やっぱり肉だよね!」ってみんなで言ってます。
ーーライブといえば、FANTASTICSのアリーナツアー「FANTASTICS LIVE TOUR 2026 "SUNFLOWER"」が5月から始まります。どのようツアーになりそうですか?
堀:今までFANTASTICSのツアーではいろんなことをやってきましたが、今回はパフォーマンスに振り切ったライブになる予定です。今までにないくらい踊ります。もちろん楽しめるし、騒げるんですが、作っている時点で僕らが何かグッときてしまっていて。FANTAROの皆さんにもそう思ってもらえるツアーになるんじゃないかなと思っています。あと、初めてのセンターステージの形状なので、そこも楽しみにしていただければと思います。
ーー先ほど「表現することは生きがいだ」とおっしゃいましたが、ものを作ったり、ダンスをはじめ音楽で表現したりするうえで、堀さんが大事にしていることを教えてください。
堀:「押してダメなら引いてみる」。僕、何かをするときにすごく考えてしまうんです。完璧にしなきゃって思ってやりすぎてしまう。だからガーッと考えたうえで、うまくいってないと思ったら引き算をしてみる。力を抜いてみたり。そういうときの感覚って逆にすごく冴えていたりもしますし。だから「押してダメなら引いてみる」は大事だなと思います。
ーー「LIVING FOR」のレイアウトも、適度に引き算されていますもんね。
堀:だいぶ余白がありますよね。素晴らしいです。
ーーでは最後に。「GL-9~FANTASTICS BOOKS~」という企画ではFANTASTICSメンバーがそれぞれ書籍を出しています。まだまだこの先も続きますが、この企画へ期待することを教えてください。
堀:すでに発売されている(澤本)夏輝くんと、(瀬口)黎弥くんのものを見させてもらいましたが、個性豊かで。今回僕もなかなかの角度のものが出来上がったので(笑)、これはメンバー全員分出てもまったく飽きないだろうなと思いました。FANTAROの皆さんも、毎月楽しみにしてもらって損はないと思います。
■書誌情報
堀夏喜 1st写真集『LIVING FOR』
撮影:池満広大(bNm)
価格:¥3,300
発売日:2026年5月1日
出版社:幻冬舎