映画『キングダム』シリーズ、なぜ“山陽の戦い”をスキップ? 改変の狙いを考察
山﨑賢人が主演を務める映画「キングダム」シリーズ(原作: 原泰久/集英社)の最新作『キングダム 魂の決戦』が7月17日に公開される。2019年の第1作から数えて5作目となる本作。前作『大将軍の帰還』が興行収入80.3億円を記録し、シリーズ累計では245億円を超える実績を誇るなど、近年の実写邦画を代表するヒットシリーズになったと言える。
今回解禁された特報映像とビジュアルと共に、舞台が原作屈指のスケールを誇る「合従軍編」であることが発表された。若き秦国王・嬴政(吉沢亮)が挑む中華統一を阻むべく、李牧(小栗旬)の知略によって楚・趙・魏・韓・燕・斉の六国が同盟を結び、秦を滅ぼすために襲いかかる物語だ。本作での「絶体絶命。」というキャッチコピーは、巨大な防壁である函谷関を突破されれば秦はすぐに滅ぼされるという、文字通り亡国の危機にある状況を分かりやすく伝えている。
映像内では李牧や万極(山田裕貴)といった宿敵に加え、キャスト未発表の蒙恬、王賁といった新キャラの登場を予感させるシーンも確認できた。一方、これまで原作に忠実に話が進行していた映画版だったが、今回それが崩れたことにネット上では不満や不安の声も少なくない。
映画『キングダム 魂の決戦』公式Xアカウント(@kingdomthemovie)より
原作通りであれば、次は秦と魏による「山陽の戦い」が描かれるはずだった。敵将はかつて王騎将軍(大沢たかお)と並ぶ作中最強格の老将・廉頗。その四天王の一人・輪虎と千人将に昇格した信(山﨑)の戦いは、“ベストバウト”との呼び声も高い。そもそも、六国が連合軍を組んで攻めてきた理由は山陽の戦いにおける秦の勝利にあったのだが、他にも復讐の旅に出て不在だった羌瘣(清野菜名)の登場シーンをどうするのか、飛信隊の軍師に河了貂(橋本環奈)、副長に楚水が加わる経緯など、整合性を取るための大幅な改変が予想されるところだ。
映画版が合従軍編を急いだ背景には、実写ならではの「役者の年齢問題」という事情もあるのだろう。2019年のシリーズ開始から年月が経ち、主演の山﨑をはじめ、吉沢や橋本ら主要キャストは大人として成熟している。長い物語をキャストが最も勢いのある時期に合わせて撮影し、最大の見せ場である合従軍編を最高の状態で完成させるのは、シリーズを続けていくためのリアルな判断だったとも思える。
では、本作の「勝負所」はどこになるのか。まず注目したいのは、六国から同時に攻め込まれ、崖っぷちに立たされた秦の絶望感の演出だ。李牧の策でほぼ“積み”の状態の中、軍の総司令・昌平君(玉木宏)が不眠不休で弾き出した戦略が鍵を握る。そして、今作のメインとして描かれるのは信と万極の激突だろう。過去に秦軍が40万人もの趙の降兵を生き埋めにした「長平の戦い」という悲劇を背負い、秦への憎しみを爆発させる万極。その狂気を山田がどう体現するのか。
他にも王騎の死後、その軍を引き継いだ騰(要潤)率いる騰軍の活躍や蒙恬、王賁、桓騎、王翦といった新キャラを俳優陣がどう演じるのかも見所だ。特報でチラリと映った桓騎軍の雷土の再現度はかなり高そう。個人的には、楚の将軍の「常軌を逸した髪型」が実写でどうなっているのか、仮面をかぶり一度も素顔を見せることがない王翦を演じる役者の胸中も気になるところである。
王騎の矛を受け継いだ信の成長を見られる日が待ち遠しくてならない。
映画『キングダム 魂の決戦』公式Xアカウント(@kingdomthemovie)より