【文芸書ランキング】ヨルシカ n-bunaの書簡型小説に注目 なぜ今「仕掛け」を持つ文芸書が熱いのか
以前、このコーナーで道尾秀介の『I』(集英社)を紹介した際に、道尾が本そのものに読者の視覚や聴覚へ訴えるような仕掛けを施した小説作品を熱心に手掛けていることに触れた。(※1)そのほかのコラムでも読者が文字を追いかけるだけではなく、五感に訴える様な仕掛けを楽しむ文芸書に注目が集まっていることについて書く機会が昨年は多かったように思う。
『異世界のんびり農家』最新刊も登場 2026年2月第4週 オリコン文芸書ランキング
2026年2月第4週(※2)のオリコン文芸書ランキングでは、そうした読者の体験を促すような作品が上位にランクインした。第2位の『ヨルシカ 書簡型小説「二人称」』(講談社)である。これはロックバンド・ヨルシカのメンバーであるn-bunaが手掛けた、書簡型の小説作品だ。小説作品に親しむ読者は書簡体小説という形式には馴染みがあるだろう。主に手紙のやり取りで構成された小説を指す。『二人称』もそうした書簡体小説に類するものだが、先行作品と違うのは形そのものが封筒と手紙になっている点だ。具体的に言えば一通の茶封筒の中に32枚の封筒と約170枚の手紙が入っており、読者は実際に手紙を開封する体験をしながら作品を楽しむようになっている。作品のタイトルが“書簡体”ではなく“書簡型”となっているのは、小説のパッケージそのものが書簡になっているからなのだ。
ヨルシカは『二人称』に連動するデジタルアルバムを3月4日より配信している。こうしたメディア連動型の動きも含めてファンが反応したこともあるのだろうが、それ以上に昨今の五感で楽しむ文芸コンテンツへの支持が背景にあると考えられるだろう。
なお、n-bunaは2月20日発売の『小説現代』2026年3月号で道尾秀介との対談を行っている。道尾が読者を物語に没入させるような仕掛けを施した“体験型ミステリ”へ取り組んでいることは冒頭で書いた通りだが、そうした感性が共鳴し合う対談になっていると思うので、『二人称』に興味を抱いた方は目を通すと良いだろう。
※1 https://realsound.jp/book/2025/12/post-2246084.html
※2 https://www.oricon.co.jp/rank/oba/w/2026-03-09/
■書誌情報
『書簡型小説「二人称」 ヨルシカ』
著者:n-buna
価格:8,470円
発売日:2026年2月26日
出版社:講談社