「心に寄り添う」話題の書、原田マハ『FORTUNE BOOK』を実践! ズボラ女子ライターが驚いた“言葉の力”
「とにかく時間がない」これは筆者がここ数年、切実に感じていることである。厳密にいえば時間がないわけではない。自分のことを大事にする時間がないのだ。仕事に加えて小学生男子の育児に家事に愛犬との時間、そして趣味の観劇を少々。気づけば、“ご自愛できない系”女の出来上がりである。
そんな折、書店でふと目にしたのが人気作家・原田マハ氏による『FORTUNE BOOK 心のままに思い書く120の言葉』(徳間書店)である。脳は、自分が欲しているものを優先的に認識すると聞く。であるならば、本書が目に飛び込んできたことにも、何か意味があるのだろう。「この本はあなたを知る入口になる――」という帯に、久々に「自分と向き合ってみたい」という気持ちが芽生えた。その事実がちょっぴり嬉しく、本書を生活に取り入れてみることにした。
そうこうしていると、クリスマスに大掃除と師走を駆け抜けて、いつの間にか新年に突入……。けれど、やっぱり何かを変えたいと一念発起し、完全にズボラ側の筆者と本書が過ごした数日間を、レポートしてみたい。
ズボラ人間にも親切な設計
本書をパラパラとめくってみると、左ページには原田マハ氏からのメッセージが、右ページには書き込めるメモスペースが用意されている。なるほど。マメにノートや手帳などを活用できないタイプの筆者にとって、すでに書くスペースが用意されているのは、なんと優しいシステムだろうかと感じる。
記されているのは、原田氏がフォーチュンクッキー「こと葉」のため2025年に書き下ろした言葉たち。読み方は自由であり、原田氏は、通して読む、1日1つ読む、写真を撮ってプレゼントする、書くことで心を整理する……といった複数のやり方を提案してくれている。
筆者はかつて仕事で占い師と関わっていたことがある。その頃から、タロットカードの1枚引きが好きだったこともあり、ランダムで開いたページの言葉を、「今日の私へのメッセージ」と受け取ることにしてみた。
自分流の使い方を決めたところで、さて、1日目。開いたページに記されていたメッセージは「時計は止められなくても、記憶は留められる」。
自分が受け取ったメッセージを好きに描けるようになっている。
このメッセージを読んで、最初に浮かんだのは数日前に観た舞台のことだ。7年ぶりに上演された作品なのだが、幕が開いて音楽が流れ始めた瞬間、筆者の記憶は7年前へと引き戻され、鮮明に当時の記憶が飛び出してきた。そんな、つい最近の体験とあまりにドンピシャで、リンクするメッセージに若干驚きながら、次は右のメモページに視線を移す。
仕事以外での感情のアウトプットはあまりに久々すぎて、何を書いていいのやら……。かなり筆が止まりながらも、ありのままの気持ちを書き出してみた。ページが埋まると、なかなか満足感がある。
ページの下半分は、次またこの言葉を引いたときに書き込めるよう空けておいた。ランダムでめくると、二度三度とこの言葉に出会うこともあるかもしれない。そんな時は、付箋などを貼り付けて書き溜めていってみるのも良さそう。
2日目。出会った言葉は「新しい躍進のために、とっておきの靴を用意しよう」。
単純、よく言えば素直な筆者は、まず靴箱へ。数秒眺めた末、「ついでに大掃除にしちゃえ!」と断捨離を決行することに。「いつか履くかも」と取っておいたものの、この1年で履くことのなかった靴とサヨナラをしてみた。例年は追われるように年の瀬にやっていたことを、12月序盤に片付けてしまった! これは快挙である。
新しいものを呼び込むには、古いもの、不要なものを手放した方がいい。頭では分かっていてもついつい後回しにしてしまいがちなことも、言葉として目の前に立ち表れると、やる気が起こるから不思議なものだ。筆者のような“きっかけ待ち”な人間にとっては、本書はきっかけ製造機としても機能してくれそうである。この日は、片付けたもの、そしてそのスペースに入れたいものを書き出してみた。
「イマイチな日」でも寄り添ってくれる
そこから家族の予定と仕事がぎゅっと詰まった数日を過ごし、ふっと訪れた午前中のひとり時間。「今日はどんな日になるかな?」とめくった先に書かれていたメッセージは「それができるかできないか、決めるのは私だ」。
本書に出会って数日だが、どのメッセージも自分にとってプラスな感情を与えてくれるという確信めいた思いがあるので、安心してページをめくれるのがいい。すっかり乙女という年頃ではないが、乙女時代とはまた違った理由でメンタルに波のあるお年頃。ピリッと辛口な言葉に背筋が伸びて奮起できる日もあれば、そうでない日もある。
後者のような、「今日はイマイチだな」と感じる日も、本書であれば開く勇気が持てるし、出会った言葉をその日の“お守り”のように持っていられる。些細なことではあるが、そういったものに私はわりと左右されてきたのだと思う。
最初は1日の終わりに、その日を振り返りながら書き込むような使い方を想定していたが、実際に使ってみると、「もっと自由でいいんだ」ということに気付かされた。まさにタイトルにあるように“心のまま”に使えばいいのだろう。
個人的には、“今、自分に必要なもの”を知って、動くきっかけとしての使い方が一番しっくりきた。筆者にもう少し芸術的センスが備わっていたなら、絵日記のように最近の出来事を振り返ったり、おしゃれなコラージュでメッセージから連想するものを表現したり、といった使い方もしてみたかったが、こればかりは一朝一夕では身につくものではない。
そこで、巻末にある「過去も未来も自由にリスト化してみませんか?」のページを活用してみる。1年後のなりたい自分を想像しながら、「イラストの勉強をしてみる」を書き加えてみた。「それができるかできないか、決めるのは私だ」――今日のメッセージが、自分のものになった気がした。
この数日間、特別なルールを設けることなく、この本を生活のそばに置いてみた。大きな決意はできなくても、「これ、いいかも」と思える言葉をひとつ持っていたら、それで十分なのだと思う。『FORTUNE BOOK 心のままに思い書く120の言葉』は、何かを変えたいという気持ちを持った読者に、ちょうどいい距離で寄り添ってくれる一冊だった。