【漫画】我が家にある“妻ルール”とは? 「弱者男性」「モラハラ」にスポットを当てた『弱男 -僕とモラ妻-』
「妻が料理好きで!(中略)僕結婚してから5キロも太りましたよ~」いつも愛妻弁当を食べる、契約社員の35歳男性・野本貞夫(のもとさだお)。社内ではおしどり夫婦という印象を持たれている彼が、35年ローンで買った中古の一軒家に帰宅すると、玄関の前に立っていたのは……鬼の形相の「愛する妻」。
実は「帰宅時には靴の裏を洗う」「トイレの利用は1日3回まで」など、妻のルールに従い窮屈な暮らしをしていた貞夫。「このバイキン野郎ぉ/出てけ出てけ出てけ」と攻撃的な妻との生活が続くなか、自分のプライドを守るために、今日も貞夫は自分で愛妻弁当をつくり出勤するーー。
上記は『弱男 -僕とモラ妻-』(Cygames)第1話の一部を切り取った内容だ。「モラハラ」「弱者男性」といったテーマを扱った本作について、作者・田辺チカ氏に話を聞いた。(皆川潤喜)
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ーー本作を創作したきっかけを教えてください。
田辺チカ(以下、田辺):本作は持ち込み用の読切として描いたものでした。友人から「ある夫婦から嫌がらせを受けている」という相談を受けて、すごく腹が立ったんです。それで、怒りの気持ちを漫画に描いてうさ晴らしをしてやろうと思って、人生で初めて描いてみた読切が本作のもとになっています。あくまでも漫画の内容はほとんど創作です。
いざ連載をするとなったときに、「弱者男性」ってどういう意味かを正しく読者に伝えたいなっていう気持ちがありました。「モラハラ」などについて勉強や情報収集をしていくなか、トイアンナさんの『弱者男性1500万人時代』 (扶桑社)という書籍に出会いました。本書には「妻からモラハラを受けている男性も弱者男性の1人だ」と書かれていたんですよ。その1文が私にとって新しい視点で。
特にインターネット上では「弱者男性」って気持ち悪くて、貧乏で、女性叩きを趣味にしている男性というようなひどい意味で使われていることが多いと思います。「社会的な事情で弱い立場に置かれているのに、みんなから見過ごされ、苦しんでいる男性の存在がいるんだよ」ということを伝えられたらいいなと思って本作を描き始めました。
ーー「モラハラ」といったテーマをエンタメにする上で気をつけていることはありますか。
田辺:バランスをとることが難しいと感じています。「モラハラ」「弱者男性」を扱いつつ、ただ単に過激なエンタメ作品にしてはいけないと思っているんです。でも漫画としてのエンタメ性も持たなきゃいけない……このバランスが難しいですね。「単なる笑い話になっていないかな」というところは気をつけています。
ーー読者のコメントやSNSでの感想は見ていますか?
田辺チカ:めちゃめちゃ見てしまうタイプです。自分の漫画を客観視できなくなってしまうので、コメント欄で気づかされる部分もあります。意外だったのが「奥さんがどうしてこんなモラハラ妻になってしまったのか」というコメントがすごく多かったことです。
世の中に「モラハラ夫」をテーマにした漫画はたくさんあると思いますが「どうしてこの夫はモラハラをするようになったか」みたいなコメントはあまり見ないと思います。ただ「モラハラ妻」を描いた本作では「加害者である奥さんに何か事情があるんじゃないか」と読者の方は関心を寄せていて……。中には「奥さんに共感したい」という読者もいて、驚きました。
ーー連載を続ける上で意識していることはありますか?
田辺:最後には貞夫に、貞夫なりの幸せを掴んでほしいと思っています。貞夫は今「家庭を持つ」「こどもがいる」といった、世間で決められた型のような幸せ像から抜け出せずに、苦しんでいると思います。もっと別の幸せというか、貞夫なりの何か幸せを見つけることをゴールにしたいと思っています。
あと、貞夫とはまた異なる立場で苦しんでいる「弱者男性」も描ければと思い、20話から新しいキャラクターを登場させてみました。読者のみなさんには新しい「弱者男性」キャラクターへの話の広がりも楽しんでいただけたらなと。
ーー11月28日に単行本が発売されました。ご自身初の書籍出版ですが、今の心境は?
田辺:死ぬまでに紙の本を出すことが夢だったので、すごく嬉しいです。ただ実感がまだ湧かないといいますか、浮ついているというか……。多分、もっと時間が経って、本棚から自分の本を出して幸せをしみじみと噛みしめるのだと思います。
ーー単行本で自分の漫画を読み返してみましたか。
田辺:読み返します。客観的に自分の漫画を読んでみたいと思って。割と楽しく読めたので良かったと思いつつ、書籍で漫画を読み返すと作者としてではなく読者として読むので、課題も見つかります。
ーー最後に、読者のみなさまへメッセージをお願いします。
田辺:本作には「モラハラ」に関する描写が多いので、読むことが「ちょっとつらい」という方もいるかもしれません。今まで貞夫が現実に諦め気味な感じが続いていましたが、今後は現実と向き合って行動していく様子の方に流れを変えていきたいと思っています。
貞夫が最後に幸せになるまで、見守っていただけたらなと思っています。みなさまからのコメントも楽しみにしております。
■作品情報
『弱男 -僕とモラ妻-』
著者:田辺チカ
低身長、低学歴、低収入、モテないなんて当たり前。
ネタにされがちな社会的弱者の苦労、笑い話で済ませていいの!?
居場所のない大人達へ贈る、ほろ苦中年賛歌!
マンガ配信サービス「サイコミ」で連載中:https://cycomi.com/title/244
コミックス第1巻も好評発売中。第2巻は2026年1月30日発売予定。
© Chika Tanabe / Cygames, Inc.