三月のパンタシア・みあ「自分の高校時代の夏を思い出しながら」書き下ろした小説『君の記憶だけない』発売 イベントで想い語る
大人気音楽ユニット「三月のパンタシア」のボーカル・みあによる最新書き下ろし小説『君の記憶だけない』(双葉社)の発売記念イベントが開催されるタワーレコード錦糸町パルコ店にて初の囲み取材が行われ、執筆するにあたっての姿勢や今作の楽しみ方を語った。
みあは、2021年に、初の長編小説『さよならの空はあの青い花の輝きとよく似ていた』(幻冬舎)を刊行。YouTubeでは動画総再生回数1億回を突破し、若者を中心に絶大な支持を集めている。そしてこの度、2025年10月15日に発売された最新書き下ろし小説『君の記憶だけない』の発売を記念したイベント(みあによるトークショー&サイン会)を開催。イベントを前に囲み取材会が行われた。
白のニットのトップスに、青い髪色とトップスのカラーに合わせた青と白のスカート姿で登場したみあ。『君の記憶だけない』のストーリーの思いついたきっかけについて、「まず、小説を書くときに心がけているのが、自分自身が読んで気持ちが熱くなれる物語が書きたいなということ」と切り出し、
「私自身の性癖だなって思う設定が、男女の強く結ばれている二人がいて、惹かれあっている。なんだけど、ある一つの運命のすれ違いがあってどうしても結ばれない。惹かれあっているのになかなかそこが結びつかないっていう中で二人がどんな選択をするのか? という物語がものすごく好き。なので、私自身がオリジナリティを持って何かそういった物語を書けないかなって考えた時に、最初に思いついたのが”恋をしてしまうと記憶を失ってしまう”という設定でした。実際にそういう病気は存在しないんですけど、だからこそ想像していく上で、その障害にぶつかった二人が、じゃあどんな選択をするのかというのが私自身も気になったので、書きながらどんな結末を迎えるのかていうのを楽しみにしながら小説を書きました」と説明。
どのような方々に小説を読んでもらいたいかの質問に「本を出させていただくのが双葉社さんの『パステルNOVEL』という、主に本を初めて手に取る10代〜20代の前半のの若い方がメイン層のレーベルということを最初にお伺いしていたので、なるべく文体のシンプルさを心がけて、私らしい文章を意識しつつではあるんですけど、なるべく最後まで読んでいただけるように心がけて書きました」と、読む層を考えて執筆した小説だと解説。
今回ヒロインの心情を描いた楽曲もリリースされていることで、楽曲と本の融合をどう受け取ってもらいたかの質問に、「執筆していた当初は楽曲制作まで考えていなかったんですけど、物語が完成して、視点が主人公・陸君の一人称の物語なので、やっぱりこう重たい病気を抱えて葛藤しているヒロイン・凛の心情も何かもう少し表現することができないかなって考えて『うたかたの声』というのを制作した」と経緯を説明。「その曲は葛藤というよりはサイドストーリー的なもの。小説でいうと物語の終盤の心情を楽曲にしているんですけど、小説とはまた違った角度から楽曲は楽しんでいただけると思うので、楽曲から入って小説を読んでもらっても楽しんでもらえると思いますし、行ったり来たりしながら二つの世界を楽しんでもらえると、より物語を深く楽しんでもらえるじゃないかなと思います」と楽しみ方を紹介。
主人公と自身が似ているところを聞かれ、「映画が好きな二人が出会うんですけど、映画が大好きという部分は私の趣味が思いっきり反映されています。ほかにも、二人とも素直になれない、言いたくてもなかなか自分の心にあることをアウトプットできないところは、私も思春期時代はどちらかと言うと言葉にするのが下手なタイプだったので、そういった部分では似ている」と答えた。
執筆中に昔の思い出や青春を思い出すことはあったかの質問に「そうですね。今回は高校生の二人が出会う物語だったので、例えば高校生の夏休みってどんな風に過ごしたのかなとか、やっぱり夏祭りというのは学生にとっては一大イベントだと思うんですけど、例えば気になる男の子に夏祭りに誘われた時、行く予定が立った時の気持ちなんかを思い出しながら、小説でも夏祭りのシーンが登場するんですけど、そういう場面では自分の高校時代の夏を思い出しながら執筆しました」と明かした。
ターゲット層以上の年齢の読者に向けて今作の楽しみ方について、「私は青春小説を読むのが好きで、なんで好きかというと、大人になってから読んだ時に、自分が学生時代に気づけなかった、それこそ言葉にできないけど何だかイライラしちゃう気持ちだったり、あの時に分からなかったモヤモヤした感情を青春小説の中で書いてくれる。心情という部分が大人になってから青春小説の素敵さに気づいた人間なので、あの時に気づけなかった気持ちというものを青春小説を読むことで答え合わせができるし、明確になる面白さもあると思う。
青春時代といっても、思春期時代だけではない、20代、30代,、40代の青春もあると思うんですけど、その青春時代の真っ只中にいる人に、若い10代の青春に触れてもらうことで、あの頃を思い出して懐かしんでもらったり、そういう楽しみ方をしていただけると嬉しいなと思います」と笑顔で答え、会見が終了。
囲み取材経験がないみあにとって初めての貴重な機会となったが、作品に込めた思いや、アーティストだからこその小説と音楽両面から楽しめる作品の魅力が更に伝わる会見となった。
【写真】オフショルダーのトップスで会見に登壇した三月のパンタシア・みあ