【漫画】父が陰謀論にハマったら? 18歳の少女の日常がひっくり返るSF『天国2.0』

 18歳フリーターの主人公・みねりと、陰謀論にのめり込む父親との歪な日常。そこに現れた謎の救い主をきっかけに、彼女は“天国2.0”と呼ばれる異世界へと誘われていく。時が止まった世界で繰り広げられる、欲望と願いを賭けたSFバトル。

 そんな注目漫画『天国2.0』の第1話が「18歳フリーター、親は陰謀論にハマってます。」として、SNSで大きな反響を呼んだ。1.5万超の「いいね」を集めた本作について作者・陽藤凛吾(@yotoringo)さんに話を聞いた。(小池直也)

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『天国2.0』(陽藤凛吾)


――Xで1.5万のいいねが集まっていますが、ご自身としてはいかがですか。

陽藤凛吾(以下、陽藤):僕ではなく担当編集の方の投稿なので恐縮ではありますが(笑)、初めて自分の作品が万バズに至ったので嬉しいです。

 編集さんとは「世の中に並走するような物語にしたい」と話して制作したので、親子関係で複雑さを抱えている方やそれ以外に何かで引っかかりを感じてもらえたのかなと

――親が陰謀論にハマってしまう、というアイデアは?

陽藤:僕自身も陰謀論に興味があるんですよ。本当かどうかわからないことにのめり込みがちなので、家族を不安に思わせがちで(笑)。信じやすいとか、受け入れやすいのが自分の特徴なのかなと。

 Naokimanさんやミルクティー飲みたいさんなどの陰謀論系のYouTuberさんも好きなんですよ。そのなかもでも特に佐藤航陽さんが好きで彼の著書『世界2.0 メタバースの歩き方と創り方』が本作の最初の着想にもなっています。

――それで『天国2.0』というタイトルになったのですね。

陽藤:そうですね。あとはSFにしたいという気持ちもありました。たまたま編集さんもSFやゲーム好きな方だったので、そういうものが好きな人を振り向かせられるような展開や世界観を意識して意見を出し合いながら作っています。

――主人公がフードデリバリーをやっているのも印象的でしたが。これについては?

陽藤:僕も高校時代に家が貧しくて、自分で授業料を払っていたんですよ。それで単価のいいバイトをいつも探していた経験が滲み出たのかなと思います。もちろん裏バイトはしてません。

――第1話を制作する上でこだわった点はあります?

陽藤:背景の街ですね。主人公の住んでいるアパートからデリバリーのシーンも含めて、町全体を3Dモデリングして、そのなかでキャラクターを走らせているんですよ。サイバーパンクっぽい世界であえて植物のない人工物だけの景色にしたのも特徴。

――ひとつの街を丸ごとモデリングしているんですか。

陽藤:そうですね。主人公が街を動いても背景が破綻しないようにと思って作りました。連載開始まで少し期間があったので時間はかかりましたが、今の技術ならトータルで30時間あれば問題ありません。

 「Blender」などの3D制作ソフトの進化は5年前とは別次元ですね。今日制作を始めた初心者の人でも明日にはある程度は何かができる、というくらい簡単。僕がモデリングした街でも時間をかければ誰でも作れます。

――本作は今後どのように描いていきますか?

陽藤:構想はあるのですが、まだ確定している展開は少ないんですよ。作りながら、その瞬間の社会ニュースやSNSの動向を反映させた選択をするというスタンスですね。

 自分で投稿はしていませんが、特にXで何がバズったのかを何年もメモしてきました。コロナ前だと「これを頑張る」というポストに共感が集まっていましたが、今は「頑張れないけど、そんな自分でもいいよね」というポストに共感が集まる印象です。

 そういった流れなども見つつ、最善だと思った内容を漫画をしていけたら。タイトルにある「天国」が何かを考えながら楽しんでもらえたら嬉しいです。

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