【漫画】人魚を食べて超ハッピー? 一つの身体に宿る二人の女性の物語『暁と呼んで』が泣ける
食べた人魚の意識に少しずつ体を奪われていく娼婦――。同じ身体を分け合い、やがて心を通わせていくふたりだが、宿主には消滅の運命が待っている。
そんな漫画『暁と呼んで』が、Xで4万を超えるいいねを集めた。この切なくも美しい物語は、どのようにして生まれたのか。作者・おあーさん(@aku_torg)が、その制作の裏側と思いを語ってくれた。(小池直也)
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――いいねが4万以上も集まっていますが、ご自身としてはいかがですか。
おあー:最初は10いいねくらいで喜んでいたんです。そこから急にたくさんの方に読んでもらえたなという印象です。ブックマークが多かったので、おすすめに上がって跳ねたのかなと。
切ない物語だとは思っていたのですが、「泣けました」という意見もいただいて、「これは人を感動させられる漫画なのか」と自分でも驚きました。
――制作のきっかけについて教えてください。
おあー:講談社の「第112回新人漫画賞」に応募しようと考えていたときにひどく寝違えたんですよ。起きたら手の感覚がなくて。それが面白くて、握ったり開いていたりしたら構想が浮かんだんです。
前日にドラマ『JIN-仁-』を観ていたこともあってか、すんなりとアイデアが出てきました。描くのもそこまで時間はかかりませんでした。というよりも締切までの時間が1カ月ほどしかなく、急がないといけなくて(笑)。
――「暁」という言葉に「さとる」という読み方があるのも知りませんでした。
おあー:エモい名前を付けたくて辞書を開いていたら、たまたま見つけたんです。さすがに「完璧やん!」と思いましたね。エンディングの伏線にもなってよかったなと。
――また「人魚の肉を食べると不老不死になる」という、よくある筋書きから外れているのも面白いです。
おあー:少し前に描いたので当時の記憶があやふやではありますが、シンプルに面白さを求めた結果だったと思います。作画にあたっては自分以外の精神体が入ってきた左手をどう動かすか、と迷いましたね。
女性の名前っぽくはないですが、設定としては女の子の人魚が入ってきた形です。呪われる話ではありつつも、怖いだけでなく人魚の好感度を上げたくて、子どもっぽいしぐさも入れています。
――歌う場面でちょうど自分と人魚とで体を半分ずつ共有しますが、あそこで月が半分になる演出も素敵でした。
おあー:月の満ち欠けに合わせた、ひと月の物語になっています。そこでやっぱり心を通わせるには歌かなと。さらにあの場面が全50ページあるなかの25ページ目に来るんですよ。そこも自分としてはこだわりポイントでした。
――他にご自身のなかで思い入れのあるシーンはあります?
おあー:何もわからない、という結末ですかね。1カ月くらい一緒にいたのにという。あとは『JIN-仁-』の主題歌であるMISIA「逢いたくていま」を最後に引用したのも個人的には気に入ってます。
――今後はどんな作品を描きますか。
おあー:今は連載について編集さんと話しています。まだ内容は言えませんが、心を揺さぶるような話を長編漫画で描ければ。