【漫画】声が低い女性はかわいそう? コンプレックス解放青春漫画『ヴォカライズ』がエモい

 自分の声が嫌い――。そんなコンプレックスを抱える女子高生がアカペラと出会い、少しずつ自分を解放できるようになっていく。そんな漫画「自分の声が嫌いな高校生がアカペラに出会う話」がXに投稿されている。

 こちらは「月刊少年シリウス」(講談社)で連載中の『ヴォカライズ』第1話。音のない漫画でアカペラをどう描いたのか、そして物語に込めた思いを作者・小菊路ようさん(@TheeKick)に聞いた。(小池直也)

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『ヴォカライズ』(小菊路よう)

――Xに投稿した手応えや印象的な反響があれば教えてください。

小菊路よう(以下、小菊路):「自分も声にコンプレックスがあったけど漫画を読んで元気が出た」などポジティブな感想をいただき、描いてよかったと感じました。自身の声や歌にまつわる思い出を語ってくれる方も多く、声や歌というのは親近感とパワーがある題材なんだなと。

 また「アカペラはいいぞ……!」とか「アカペラ聴いてみたい」などアカペラを題材にしていることに興味を持ってくれて好意的に受け取っていただけたのも嬉しかったです。

――本作の着想や制作のきっかけについて教えてください。

小菊路:私自身も声にコンプレックスがあり、人見知りな性格なんです。人前で自信をもって声を出すということが苦手なので、声を題材に「自身を好きになる主人公が出てくる話」が描きたいと思いました。

――もともと音楽やアカペラ、歌に興味がおありだったのでしょうか。

小菊路:音楽経験は小学校6年間ピアノのレッスンに週1で通ったこと、高校時代にギターをちょっと弾いて挫折したことくらいです。歌に関しても声に自信がなく歌えないので、アカペラは聴く側ですね。

 だからこそ歌やダンスなど肉体的感情表現ができる人々への憧れがずっとあり、自分の声という楽器を使ってハーモニーを作り上げる方々を見ると感動します。

――なぜタイトルを「ヴォーカライズ」ではなく「ヴォカライズ」としたのでしょう?

小菊路:母音だけで歌う歌唱法の「vocalise」や英語の動詞「vocalize」(はっきり声に出すなどの意味)などから着想した造語的タイトルでした。これについては、「月刊少年シリウス11月号」(9月26日発売)に掲載される9話に由来を描いています。ぜひ読んでみてください。

――本作を描く際に意識したことやコンセプトなどはありましたか。

小菊路:手の動きやマイクの持ち方・体の動きなどアカペラをやっている人から見ても納得できるような人物の表情や仕草と、音楽を感じてもらえるような画面になってほしいと考えながら描いています。

 また「自分が自分を大好きになるために」を作品テーマとして描いていまして、登場人物が自分の力で、もしくは仲間と一緒に壁を乗り越えていった時の解放感や幸福感が伝わるといいなと。

――連載で大変だったエピソードなどもあればお願いします。

小菊路:悩みは、音が鳴らない漫画でアカペラをどう描くかということ。ちゃんと伝わっているものになっているのかという不安は常にあります。

――主人公の「瀬尾セラ」のキャラクターデザインは何かイメージがありましたか。

小菊路:主人公の瀬尾セラの「セラ」はスペイン語の「Que sera, sera(ケ・セラ・セラ)」から連想していて、なぜか「主人公の名前はセラだ!」と構想の初期から決めていました(笑)。

 どんな困難に出遭っても「Que sera, sera!(なるようになる!何にだってなれる!)」という未来への軽やかなポジティブさがキャラに宿れば良いなと思っています。容姿も最初からイメージが浮かんでいました。後ろ髪がロングだと歌う時に動きが出ていいと思ったのかもしれません。

――本作は現在、単行本が2冊出ていますが、この手応えやフィジカルな出版物としてリリースした印象などがあれば教えてください。

小菊路:電子を買ったうえで紙の本も買ったとご報告いただくこともあり、大変嬉しいです。一方「書店に置いていない」というお声もいただいていて、その時は書店でご注文いただけると幸いです……。

――今後『ヴォカライズ』どのように描いていきますか。他に展望などもあれば、それも合わせてお願いします。

小菊路:主人公のセラは自分の声にコンプレックスを抱いていますが、他の登場人物も同様に何かしらの「他人には言い出しにくい悩み」をひっそりと抱えているんです。そんな彼らの世界が開ける瞬間をたくさん描けたらいいなと。そして読んだ人がポジティブな気持ちを持てるような作品にするように頑張っていきます。

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