【漫画】鶏、豚、牛、兎に魚に鹿……吸うならどんなフレーバーが良い? ちょっぴりゾッとするコメディ『肉タバコのススメ』

肉タバコはどこから着想したのか

――今回『肉タバコのススメ』を制作した経緯は?

由良木:実は1ページ目を描いたのが5年ほど前なんです。当時は「女の子と機械のイラストを漫画チックに描こう」と思い、1ページ目を描き上げたのですが、それで満足して放置していました。それを奥さんが、「これの続きはいつ見られるの?」と聞いてきたことをきっかけに、続きを考えて完成させました。

――そもそも、「肉タバコ」はどのようにして生まれたのですか?

由良木:制作当時は燻製がマイブームで、「火をつけると風味が出るという部分がタバコと似ているな」「タバコと燻製を合わせたら意外と良い商品が生まれるのでは」と思い、肉タバコが生まれました。また、世界観としては未来の話なので、電子タバコの名残としてニクロム線や、燻製の香りが引き立つようにウッドチップを入れています。実際に製品化すると吸えたもんじゃなさそうですが。

――「後輩が先輩から肉タバコについて教えてもらう」という流れでしたね。

由良木:「肉タバコという製品が実際にあったら味があるんだろう?」「どんな人が吸って、どんな派閥が生まれるんだろう?」「どんな違法なことが起こるのだろう?」など、世界観を膨らませていった結果、それを紹介する形式が一番この世界観を楽しんでもらえると考えました。

――散々説明を聞いておいて最終的には肉タバコを買わない、というオチの切れ味がすごかったですね。

由良木:私はタバコを吸わないのですが、別にタバコの臭いが特別嫌いということもないです。「口が臭くなる」というオチは、世界観を広げていく中で「肉タバコのデメリットってなんだろう?」と考えた時、「燻製もかなり臭いが強いし、タバコも臭いが強いから、それが口の中で合わさったら尋常じゃない臭いになるだろう」と考え、そのデメリットを紹介するためにこのオチになりました。

登場人物の設定は詳細に決める

――先輩と後輩の2人はどのようにデザインしていきましたか?

由良木:作品の流れ上、タバコを吸いそうなキャラとタバコを吸わなさそうなキャラを用意しなければいけません。偏見ですが、先輩はキャップにピアスの見た目にし、後輩はタバコを吸わなさそうな黒髪ショートカットにしています。

――後輩は一人称が「おれ」ですが、中性的な見た目をしていました。

由良木:未来の話なので「性別の概念も今より多様になっているだろう」と思い、中性的にしています。

――また、店長をはじめとしたクセが強すぎる登場キャラが印象的でした。

由良木:まず「作品のためだけに用意したキャラクターにしないようにしよう」というのが本作の方針としてありました。キャラクターは簡単に生い立ちから考え、漫画には描写されていないけれども、それぞれの人生の奥行きを感じ取れるように意識しています。

――その意識が各キャラが“立ちまくっていた”背景なのですね。

由良木:そうかもしれません。具体的には、ヴィーガンのおじさんは自然派なので、より自然を感じ取れるように半裸にしています。店長はグレーなことをたくさん行っているので、足がつかないように顔をおじいさんに整形しています。なので首は若く描きました。また、サラリーマン風のおじさんは自分の指を肉タバコにしていて、その肉タバコは特別な日に吸うためにケースに入れて胸ポケットにしまっています。それらの設定を匂わせる見た目を意識した結果、キャラクターの個性や描き分けにつながったのかもしれません。

――鉛筆で描いたような作画も魅力的でした。

由良木:「たくさん線を描くと描いていて楽しい」という理由で、あまりベタやトーンは使わず、線で影や質感を表現しています。背景に関しても、普通の建物では世界観にマッチしないので、「なるべく変な形の建物にしよう」と意識して作画しました。それが自分の個性になっているのかなと思っています。

――本作で「ヤングマガジン」月間新人漫画賞で期待賞を受賞した由良木さんですが、今後はどういった作品を描いていきたいですか?

由良木:自分もみんなも楽しめるような作品をできるだけたくさん生み出したいと思っています!私の漫画を読んで、少しでも気持ちが明るくなったり、暗くなったりしてくれたら幸いです!

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